OSK日本歌劇団「春のおどり」
     2024年4月5日~14日
大阪松竹座
 NHKテレビ小説「ブギウギ」(2023年10月~2024年3月)の効果もあって、ヒロインのモデルになった笠置シズ子が在籍していたOSK日本歌劇団がいま注目を集めている。4月5日の初日に観劇したが、開演前と幕間のロビーはプログラムやグッズ、写真などを買い求める人で〝あふれかえる〟盛況ぶり。これがブームに終わらず、初めて観る人にも「また来たい!」と思わせることを期待。そのとおり、レヴューの特徴である「和と洋」をビジュアル的にも華やかに展開し、「次」が感じさせる公演になった。男役トップをつとめてきた男役の楊琳(やん・りん)、娘役の舞美(まいみ)りらは、この公演に続き、「レビュー IN KYOTO」(京都・南座、7月13~21日)、「レビュー 夏のおどり」(東京・新橋演舞場、8月7~11日)をもっての退団が決まっている。
第1部「春揚桜錦絵(やなぎにはなはるのにしきえ)」(構成・演出・振付・山村友五郎)
 暗転のなか、「春の踊りは~ヨーイヤ。サァ~」を合図に、柝(き)が入り、舞台が明るくなると楊を中心に着物姿の出演者が総踊り。レビュー。・ファンにはおなじみの「チョン・パ」と言われる演出だが、そうではない観客たちにとっていい意味で意表をつく趣向で、ぐいぐいと惹きつけていく。途中には、「ブギウギ」で梅丸少女歌劇団の男役スターを演じた翼和希(つばさ・かずき)らが演じる芝居「たけのこ」も登場。桂米朝も演じていた上方噺のよくできた短編だ。さらに、「麦屋節」(富山)、「大漁唄い込み」(宮城)、「ちゃきり節」「(静岡)、「佐渡おけさ」(新潟)、「深川マンボ」(東京)と続いて民謡シリーズの最後は地元・大阪の「河内音頭」。宝塚歌劇団を含めて、いわゆる少女歌劇には「民謡」「郷土芸能」も大切なコンテンツの1つで、これまでにも数多く演じられてきた。今回は構成・演出・振付が山村流六世宗家の山村友五郎ということで、これだけ多く集中して、しかも原型に近く演じられている。そのなかで、庶民的でカジュアルな「河内音頭」は演じられることが比較的少ないよう。ただし、山村の父親で宝塚演出家の植田紳爾が若い頃に演出や演出助手をつとめていた宝塚新芸座では、フィナーレに「河内まめかち音頭」(鍋で豆を炒っている時に《カチカチ》と鳴るように、テンポの速い温度)で総踊りをしていたという記録が残っている。 そして第一部の最後は、楊が別れのメッセージを込めて「櫻よともに舞え」を歌い上げた。
第2部「BAILA BAILA BAILA」(構成・演出・荻田浩一)
 こちらは、サックスが奏でる「春の踊りは~ヨーイヤ。サァ~」のメロディーから始まり、ラテンでの〝総ダンス〟。ちなみに、「BAILA」は「踊れ」のスペイン語で、まさにダンスのオンパレード。構成・演出の荻田は「ブギウギ」での劇中劇を演出していたご縁もあって、主題歌をはじめ、服部良一・笠置シズ子コンビの「ジャングル・ブギー「東京ブギウギ」そして「大阪ブギウギ」も。すっかり、メロディーが耳なじんだこともあるのだろうが、アレンジした楽曲は新鮮に思えたが、もう少し歌いこなしてほしい気もした。さらに、「ブギウギ」にも登場した「胡蝶の舞」も再現された。黒燕尾での群舞。ラインダンス。初舞台生(第100期生)3人も紹介された。さらに、カーテンコールは、いつもとおり「桜咲く国」。客席での桜(小さなピンクの傘)も心なしか、いつもよりも満開のようでもあった。
(C)松竹

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