1986年夏の想い出

「サバカン」
2022年8月19日公開

タイトルの音感は一瞬、フランス映画?とも思えるが、昭和の(1986年)の長崎を舞台にした日本版「スタンド・バイ・ミー」。ライター?を演じる草彅剛が、小学5年生の頃の自分と同じクラスの「友達」を思い出すという形式。これが初めての監督作品となる金沢知樹の自伝的ストーリー。「売れない」という設定だが、同じような仕事を生業としている自分から見ると、「これは、真っ先に書いて、発表しないといけないだろう」とツッコミを入れたくなるほど、いい話!
キーワードは「またね」と「友達」。イルカに会うために、自転車で旅に出る2人の少年。彼らにとっては大冒険と思える経験をして戻ってきたときに、「またね」を何度も繰り返す2人。そこには、「もう友達だよね?」と確認しようとする子供の頃にみんなが抱く気持ちを象徴している。少年2人が「ことさら」ではなく、自然な演技でそうした心情を表していて、じわりとくる、
さらに、この映画の大きな魅力は大人たち。夫婦を演じる竹原ピストル、尾野真千子、夫を亡くし懸命に子供たちを育てる貫地谷しほり、ミカン栽培をする頑固やオヤジ役の岩松了などなど。演技というよりも、存在そのものに味わいがある。竹原が「酒と涙と男と女」を鼻歌で歌うのも、なんか得した気分。
「サバカン」とは「さばの缶詰」のことで、にぎり寿司は格別の味だとか。個性的で忘れれないタイトルと同様、この映画も「今年の夏の想い出」になるだろう。
映画『サバカン SABAKAN』公式サイト (sabakan-movie.com)