「プリシラ」
2024年4月12日公開
 
エルヴィス・プレスリーが亡くなって47年。ある人はたくさんの主演映画も製作された〈アイドル〉のプレスリー時代。また、ある人はラスベガスでジャンプスーツ姿でパワフルなショーを繰り広げた〈エンタテイナー〉エルヴィス時代としての記憶がある。いまでは、そうした活躍を知らない人も多くなかったが、それでも知名度は抜群。彼の歌いっぷりやしぐさ、派手な衣裳を競い合う世界的なコンテンスはいまも開催されていて、私にもその日本代表になった知人がいる。
 そんなスーパースターだけに、ドラマチックな彼の生涯を描いた「ザ・シンガー」(1978年、ジョン・カーペンター監督、カート・ラッセル主演)、「エルヴィス」(2022年、バズ・ラーマン監督、オーティン・バトラー主演)といった映画が作られている。一方、彼を取り巻く人々も魅力的で、「エルヴィス」では、生涯を通じてマネージャーをしていたパーカー大佐(トム・ハンクス)も重要な役割を果たしていた。
 そんななか、エルヴィスの妻、プリシラをヒロインに、ソフィア・コッポラが監督をしたのがこの映画。スーパースターの妻としての栄光と挫折、別離が描かれ、彼女の目を通して、夫のやさしさ、わがままなど人間としての部分も浮き彫りになっていく。
 2人の出会いはエルヴィスが兵役でドイツにいた頃、プリシラが14歳の時。彼女の素朴ななかの美しさ、魅力を見出したエルヴィスは接近していく。このエピソードをとっても、どちらの視線か?によって大きく違う。もちろん、プリシラにとっては、カッコよさはもちろんのことだが、スターらしくない人柄に触れて恋に落ちる。しかし、一方では少女を別室に招いたりする彼の心境は完璧にピュアだったのか?おじさん目線ではどうしても、そんな疑念が生じてしまうし、それからの進展もどうしてもそれを引きずってしまう。つまり、これまでエリヴィスという1人の男性を軸にしたものだったため、よけいに、この映画が新鮮に感じた。ただ、プリシラの両親、それも最初は交際に反対していた父親が、プリシラを単身で渡米させるなど急に理解していくあたりは、もう少し気持ちの変化が欲しかった。
 グレイスランドと呼ばれる豪邸で2人の甘い暮らしが始まるが、「自分好みのファッション、ヘアスタイル」を要求、それに従い「黒髪で濃いアイメイク」に変貌する。これが象徴しているように、「エルヴィス好み」の妻になろうとするが、夫の不倫疑惑などもあて、心が離れていく…。
 また、冒頭のラモーンズの「Baby I Love Youベイブー」をはじめ、フランキー・アヴァロンの「Venus」などが続き、最後はドリーバートンが歌う「I Will Always Love You」。時代を超えたメロディーが流れるコッポラ監督の選曲もいい。このように、イメージを膨らませる音楽やブランド衣裳、豪邸での優雅な暮らしぶりなどファッショナブルな色合いに包まれながら、「女性の自立」が描かれている。
〈キャスト〉プリシラ=ケイリー・アピーニー。エルヴィスー=ジェイイコブ・エロルディ。
〈ストーリー〉。 14歳の少女プリシラはスーパースター のエルビス・プレスリーと出会い、恋に落ちる。やがて彼女は両親の反対を 押し切って、大邸宅でエルビスと一緒 に暮らし始める。これまで経験したこと のない華やかで魅惑的な世界に足を 踏み入れたプリシラにとって、彼のそばでともに過ごし彼の色に染まること が全てだったが……。
〈スタッフ〉監督 ソフィア・コッポラ。製作 ソフィア・コッポラ、ロレンツォ・ミエーリ、ユーリー・ヘンリー。製作総指揮 プリシラ・プレスリー、ロマン・コッポラ、フレッド・ルース、クリス・ハッチャー。原作 プリシラ・プレスリー、サンドラ・ハーモン。脚本 ソフィア・コッポラ。
2023年製作/113分/PG12/アメリカ・イタリア合作 原題:Priscilla
配給:ギャガ
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