片岡れいこ監督インタビュー

映画「華の季節」

片岡れいこ監督インタビュー

2023年10月13日から京都シネマ、同10月14日から大阪シネ・ヌーヴォで公開

京都市立芸術大学美術学部卒業後、グラフィックデザイナーとして活動し、版画家としても知られる片岡れいこ(56)が学生時代から憧れがあったという映画監督に初挑戦したのが2020年の「人形の家」で、続いて昨年「ネペンテスの森」を発表し、このほど3作目の「華の季節(とき)」(ワンウェイフィルム製作)を完成させた。「遅い映画監督進出だったが、やっと永年の思いが届けられる」と片岡監督は笑顔を見せる。

「映画は子どもの頃見た『春男の翔んだ空』(1977年、山田典吾監督)に感動したことが心に残っている。私の弟が難聴だったことがあり、障害者のいる家族を描いた作品に共感した。DVDで見たスペイン映画『汚れ無き悪戯』(1957年)も大好きで、映画という存在が憧れとして心に刻まれた気がする。その後『何か大事な物を届けたい』という思いが募り、今日の映画作りにつながった」と述懐する。

「一、二作目は夢とファンタジーの物語で、撮影が大変でお金もかかり、映画作りの大変さが分かった。それでももう一本やりたいと思ったのが時代劇で、二十年前に読んで感動した山本周五郎短編原作『菊千代抄』。これを明治の初めの京都を舞台に移して切なくも華やかに描きたいと思った。幸い、前作に出てもらった俳優の松本杏海さん(18)と、難波江基己さん(29)に主人公たちをやってもらえることになりロケ地として京都・亀岡市と亀岡フィルムコミッションが協力してくださることになり準備が整った」

映画は華族の家の第一子として生まれた娘・珠緒(松本)が、家訓のため男として育てられることになり波乱の人生をたどる物語。16歳の珠緒は自分を男としか思っておらず、だれも真実を教えてくれない。唯一心を許せる友、10歳年上の家庭教師・晃士郎(難波江)だけを頼りにしていたが、初潮を迎えた珠緒は自分の本当の性を知り、信じていた晃士郎に対し困惑の念を抑えきれなくなる。

「周五郎作品としては異色で、女性的な物語。時代劇は難しいが、この女性の珠緒を描きたいと思った。そして、珠緒をずっと見守っていた男の晃士郎を描きたいと。周五郎原作の文章に書かれていない行間にある珠緒と晃士郎の気持ちを映像で描こうと。ラストはどんでん返しのように、主人公の思いが観客に伝わるように願いながら撮影していた」

現代は男女のジェンダーのありようについて論議されることが増えている。手塚治虫の「リボンの騎士」、池田理代子の「ベルサイユのばら」などのヒロインは今でも語られることが多い。「自分らしさが報われること」が大事なこと。「前二作が報われない物語だったので、今回はハッピーエンドになった。映画のタイトルは、女は華という意味と、男と女の青春は共に華の季節ということをかけている」。

片岡監督は「華の季節」のロケ地になった亀岡市と連携し、次回作「つぎとまります」の準備に入っている。亀岡のバス会社に勤めるヒロインを中心にしたヒューマンファンタジーという。女優の片岡礼子と名前が同じで間違われることがある片岡監督は「素敵な女優さん。機会があれば一緒に仕事ができれば」とエールを送っている。

写真は「京都・亀岡市はロケ地の宝庫です」話す片岡れいこ監督=大阪・九条のシネ・ヌーヴォ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA