「A LIFE ブルース・リー伝」
著・マシュー・ポリー 訳・棚橋志行
亜紀書房  5400円(税抜き)
567ページに及ぶ本を読了した。「燃えよドラゴン」などで活躍したブルース・リー(1940年~1973年)の生涯を綴った内容。33歳という若さで急死した後に、全米で主演作「燃えよドラゴン」が公開され、大スターとなった人生は、まさにドラマチック。それだけに、これまでにも数々の関連本が発行され、それらも読んだが、そのなかでこの本は、リンダ夫人や香港映画のプロデューサーらのインタビューなどもふんだんに登場、綿密な取材で、かなり〝信用できる〟伝記に思えた。
ふだんはこんなことはしないが、最終章から読み始め、だんだんと章をさかのぼって読んでいった。というのは、まず知りたかったのは、リ―の死因と亡くなった時の状況だったからだ。通説は愛人宅で急に昏睡状態になり死に至ったというものだが、それを完全否定する説もあり、まさに「藪の中」だからだ。この本によると、やはり愛人宅で亡くなったというもので、それを隠蔽するために、夫人も含めていろいろな偽証がなされたという。スターとしては、そうであって欲しくはないが、完全無欠のヒーローではなく、やはり1人の人間だったというリアルな人物像が浮かんできた。興味深かったのは、その直前に、二代目ジェームズ・ボンド役のジョージ・レイゼンビーと会食をしていたというエピソード。「女王陛下と007」でスターの座をつかめたはずだったレイゼンビーだが、これ1作だけで終わり、後は「昔の名前で出ています」状態。蓄えも少なくなったために、香港映画に活路を見出そうとしていたのだという。そういえば、この事件の後、彼は「スカイハイ」(1975年)というオーストラリアとの合作映画に主演。ちなみに、その主題歌はプロレスラーのミル・マスカラスの入場テーマとして大ヒットした。
さて、最も興味があったのは死因。麻薬の過剰摂取という説が有力だが、この本では「熱中症」という病名が。過激なアクションをこなすリーは、、もともと体が熱くなる体質で、さらに映像で「汗をかいている姿」はカッコよくないと、脇の汗を抑える手術もしていたというのだ。なるほど、とは思うが、これはあまりも意外だった。
この他、尊敬していた勝新太郎に直接に会って共演の申し入れをしたなど、知らなかったエピソードが満載。最初は、その分厚さに圧倒されたが、けっこうスイスイと読み進めることができた。
亜紀書房 – ブルース・リー伝 (akishobo.com)

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