著者・中川右介
日本実業出版社  2200円(税別)

500ページに及ぶ1冊。表紙には、小林一三(東宝)、大谷竹次郎(松竹)、大川博(東映)、永田雅一(大映)、堀久作(日活)の肖像が並ぶように、「映画に賭けた経営者の攻防と興亡」(副題)が、膨大な資料に基づいて描かれている。 前述した映画会社を立ち上げた社長たちとは「違う時代」を生きているのだが、語り継がれているさまざまな伝説は知っていた。この本を読んで、それが間違っていなかったことや、さらにその裏面には虚々実々の駆け引きがあったことがわかった。
例えば、長谷川一夫の松竹から東宝への移籍をめぐる出来事(頬を切られるという事件が起こる)。良くも悪くも〝興行師〟であった永田雅一が、さまざまな仕事を経て、実力者に取り入ることで権力を手に入れるのは、ドラマを地で行くような「立身出世物語」だったことなど。映画の作品そのものについての紹介、評論の書籍が多いなか、こうした視点でとらえたのは斬新で、映画ファンにとっても必読書といえる。

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