「フィリピンパブ嬢の社会学」
2024年2月17日公開
修士論文を書く為、フィリピンパブでインタビューを開始する大学院生を主人公にした人間ドラマで、実話ベースの作品。主人公の翔太はパブに通う中で様々な問題に直面する。
どんなビザで日本に来たのか?。フィリピンでの職業は何か・・・?。前田航基扮する主人公は、始めは距離を置いてパブの女性労働者に取材し、データを取るためだけに接していく。が、相手の姿は次第に、同時代を生きる同じ人間として彼の眼に映るように。その一方で、パブの経営サイドは、翔太を客の1人としか考えていない。白羽弥仁監督は、大学と社会の間で微妙に揺れる、モラトリアム期の青年心理をユーモラスな演出で捉えた。
フィリピンから日本に来て、様々な矛盾に突き当たる女性を描いた、ルビー・モレノ主演「あふれる熱い涙」から32年が経ち、アジアから日本に出稼ぎに来る女性の労働条件は、そして日本は変わったのだろうか。
是枝裕和監督の「軌跡」で主演を務めた前田航基は、お笑いコンビ・まえだまえだの名でも知られるが、そのユーモラスな持ち味でほろ苦いテーマに軽やかさを加え、本作を一風変わったラブストーリーに仕立てた。最初はフィリピンパブ嬢を分析していた主人公・翔太の視線は、やがてパブに通う日本人分析へと移り、受け入れ側の経営者分析へと移っていく。監督は、パブで働く女性労働者の背景をきちんと描くことで、日本社会の一断面を切り取った。日本人常連客を「ブギウギ」の近藤芳正、「ONODA一万夜を越えて」の津田寛治、「東京不穏詩」の飯島珠奈ら、実力派俳優が脇を固めているのも見どころ。
(2023年/日本/114分)
配給 キョウタス
©『フィリピンパブ嬢の社会学』製作委員会