「DOGMAN」
2024年3月8日公開
タイトルからして、ワイルドなヒーローが敵を次々とやっつける痛快アクション?と勝手に想像していたが、全く違うテイストで、いい意味で裏切られた。「ニキータ」(1990年)、「レオン」(1994年)でのスタイリッシュなアクション映画で鮮烈な印象を残したリュック・ベッソン監督。近年はその頃に比べて話題にあがることが少なくなっていたようだったが、まさに復活!ラストまでぐいぐい惹きつけられていった。
少年期に父と兄に虐待され、犬小屋に閉じ込めて、犬を家族として育った主人公「ドッグマン」。暗殺者として生きる道を選んだヒロインを描く「ニキータ」、冷酷な殺しを犯す一方、観葉植物を愛する男を軸にした「レオン」と、〝ワケあり〟の個性強い人物を登場させるベッソン、今回の主人公も犬を愛する女装の男性という強烈なキャラクターが軸。さらに、投獄された彼が生い立ちを語る精神医(女医)も自らの生活に悩みがあり、話を聞くうちにシンパシーを感じるのと同時に、方向性を見つけていくという構成、演出がドラマの奥深さを作り出している。
犬と一緒の暮らしを維持するために女装してキャバレーで歌う「ドッグマン」。濃いめのメイクで歌うのは、エディット・ピアフの「私は後悔しない(水に流して)」、マレーネ・ディートリヒの「リリー・マルレーン」、マリリン・モンローの「お熱いのがお好き」と、フランス、ドイツ、アメリカそれぞれのディーヴァの代表曲が並ぶ。さらに劇中歌には「ゴッドファーザー 愛のテーマ」と、選曲も洗練されている。
クライマックスは、ギャングとの壮絶なアクション!〈かわいい動物〉としてではなく「生き物」としての犬は凄みがあり、リアルだ。
〈ストーリー〉ある夜、1台のトラックが警察に止められる。運転席には負傷した女装男性がいた。荷台には10数匹の犬が乗せられていた。「ドッグマン」と呼ばれるその男(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)は、獄中で精神科医(ジョージョー・T・ギッブス)に自らの半生について語り始める。犬小屋に入れられ、暴力を浴びて育った少年時代。犬たちの存在に救われながら成長していく中で恋を経験し、世間になじもうとするも、人に裏切られて深く傷ついていく。犬たちの愛に何度も助けられてきた彼は、生きていくために犬たちとともに犯罪に手を染めるが、「死刑執行人」と呼ばれるギャングに目をつけられてしまう。
2023年製作/114分/PG12/フランス
原題:Dogman
配給:クロックワークス
(c) Photo: Shanna Besson – 2023 –LBP – EuropaCorp – TF1 Films Production – All Rights