SkyシアターMBS 
   2024年3月27日オープン
MBSメディアホールディングス、MBSライブエンターテインメントが運営する新劇場「SkyシアターMBS」が2024年3月27日にオープン。それに先駆けて同年2月19日の内覧会に参加した。「エバーグリーン」をコンセプトに、緑を基調にしたロビー、劇場内は「都会の中の緑」にように心おだやかな気持ちにもなり、これから舞台上で起こるさまざまなドラマと良いコントラスト、調和を醸し出しているようで、期待がさらに膨らんだ。毎日放送(MBS)はかねてから舞台芸術に理解があり、これまでに運営してきた劇場の思い出がよみがえってくる。
まずは、劇団四季(以後、「四季」と表記)の仮設劇場「キャッツシアター」(1985年~)。1983年に東京で日本初演したミュージカル「キャッツ」は、2年後に大阪へやってきた。東京ではフジテレビがバックアップしていたが、大阪は四季との絆によってMBSが主催。当時、私はスポーツ紙の演劇担当記者で公演前から通いつめた。仮設劇場だけあって防音設備は充分とは言えず、近くを行き交うJRや車の音が客席に漏れた。しかし、都会に棲む猫たちの物語だけに、結果的にはかえって効果音?にもなっていたのを記憶している。ちなみに、この劇場があったあたりが、「SkyシアターMBS」が入ったJPタワー大阪。ある意味で「原点回帰」となるのだ。
この後、大阪球場跡の仮設劇場「キャッツドーム」(1992年)に移り、さらに既存劇場を運営することになった。1995年、大阪・堂島にそれ以前からあった毎日ホールを改装、「MBS劇場」として四季作品を次々と上演していった。さらに〝本格的〟な劇場として1999年に「大阪MBS劇場」が大阪城ホールの川向いに建設された。今だから明かせるが…。その1年ほど前、四季の浅利慶太代表を横浜の四季芸術センターで個別インタビューした時に「関西の新しい拠点は?」と尋ねると、「大阪に帰ったら、ホテルニューオオタニ(大阪市中央区)の上層階にあがって窓から見下ろしてみたら」と謎をかけられた。さっそく、行ってみると、眼下に、工事をしている広い敷地があった。そこでも「ライオンキング」など四季作品が上演されたが、2005年からは四季以外の演目を上演することになり、「シアターBRAVA!」と改称した。ここまでは前史と言えるもので、MBSが本格的に運営することになったのはこれ以降。
「シアターBRAVA!」では幅広いレパートリーが上演された。個人的には作品のために客席を減らしてまで舞台を広く〝改装〟した「ラ・マンチャの男」。市村正親、大竹しのぶの「スウィニー・トッド」。そして、ミュージカル「ナイン」「麦ふみクーチェ」といったMBS自主制作の作品などが記憶に残っている。しかし、その劇場も惜しまれながら、2016年に閉館。MBS関係者に会うたびに、「新劇場は?」と聞き続けていたが、その間にももちろん、関係者が敷地を探し続け、ついにこれ以上ないというほどアクセスのよいJR大阪駅近くのスペースを確保したのだった。冒頭に長々と書いてきた「歴史」のなかで培ったノウハウを生かして、観客目線で快適性を求めている。座席にもその意思が表れている。どの劇場も前の座席との空間は広いとは言えない。多くの観客がつま先が伸ばせず、膝が深く曲がったままの状態で観劇を強いられる。そのことによって足がうっ血する可能性もあって、それを避けるために、座面の先端の厚さを薄くした。このように細やかな心遣いが随所になされている。
大阪に1300席規模の劇場ができるとあって、今年度は90パーセント程度、予定が決まっていて、現状は貸館や共催という形式が多い。村田元(はじめ)支配人は「1,2年はともかく劇場を知ってもらうことが大切。数年後には自主制作ができれば」とも話す。そんなことをおおいに期待したい。
〈2024年ラインナップ〉「中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~」(3月27日~31日)。「カム フロム アウェイ」(4月4日~14日)。「ありがとう浜村淳です50年記念公演」(4月15日)。「リア王」(4月18日~21日)。「望海風斗ドラマティックコンサート「Hello,」(4月24日~28日)。「らくごのお時間10周年落語会 噺家八景」(4月29日)。「ハネムーン・イン・ベガス」(5月6日~19日)。地球ゴージャス30周年記念公演「儚き光のラプソディ」(5月31日~6月9日)。「魔法使いの約束」エチュードシリーズ Part1」(6月15日~23日)。「鋼の錬金術師―それぞれの戦場(いくさば)―」(6月29日~30日)。「この世界の片隅に」(7月18日~21日)。井上ひさし生誕90年第2弾 こまつ座 第150回公演 「母と暮せば」(7月下旬)。ENTERTAINMENT DANCE PERFORMANCE「BOLERO-最終章-」(7月)。ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」(10月)。ミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」(11月9日~24日)。
〈劇場概要〉
大阪市北区梅田3-2-2 JPタワー大阪 西側 5~8階部分 (エントランスは6階)
2層式 (1階26列+2階11列) ※センター部は千鳥配置。(通常時)1289席(1階871席 + 2階418席)。(オケピ使用時) 1197席(1階779席+2階 418席。別途車椅子席7席。
舞台間口: 12.7m ~17.2m。舞台高: 900mm。奈落: 3.1m。
商業施設(KITTE大阪)2024年7月開業予定。ホテル (THE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collection)2024年夏開業予定

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