「マエストロ その音楽と愛と」
  Netflixで配信

 レナード・バーンスタイン(1918年~1990年)と言えば、まず思い浮かぶのは「ウエストサイド物語」で流れるメロディーの数々。そのように作曲家としての華々しいキャリア、クラシック音楽を指揮する颯爽とした姿のイメージが強い彼の生涯を描いた作品。といってもサクセス・ストーリーではなく、同性愛者であり、アルコール依存、麻薬も吸引していたというショッキングな事実も登場。それをスキャンダルとして描くのではなく、妻や娘が著書などで告白していて、そうした名声を得た人物の苦悩などが綴られている。
 冒頭、1943年11月14日の彼についての有名なエピソードが語られる。病気のため指揮できなくなった名指揮者ブルーノ・ワルターの代役としてニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団(現・ニューヨーク・フィルハーモニック)の指揮を、と掛かってきた1本の電話。それで飛び起きた彼のベッドには男性が…。そこからカメラは劇場へ移り、喝采を浴びる光景に。けっしてセンセーショナルではなくテンポよく、サクセス・ストーリーの始まりが描かれ、ひきつけられていく。
ドラマの軸はバーンスタィンとフェリシアの夫婦関係。自分でネクタイも決められない(決めない)ほど妻に任せっぱなしの夫。妻は「子供のように接していて、わがままやセクシュアリティも〈許容〉していた。しかし、それにも限界があった…。程度の差こそあれ、こうした関係性は多くの夫婦にもあって、巨匠が人間に思えてくる。
一方、どうしても演奏シーンを期待するところだが、それは約6分間に及ぶ交響楽団の演奏シーンに集約。主演のブラッドリー・クーパーは、このために猛特訓をしたという。
余談ながら、エンリオ・モリコーネを取材した「映画が恋した音楽家」というドキュメンタリー映画がある。映画音楽の作曲家として知られるモリコーネだが、インタビューに答えて、恩師や世間からそう見られることへの違和感を話している。この映画でバーンスタィンも同じようなことを話す場面があるのも興味深い。
 そんななか、バーンスタイン自らが「踊る大紐育」に登場する水兵に扮したミュージカルシーン・「ウエストサイド物語」のメロディーが流れるなど、うれしい描写あって、多角的に楽しめる作品だ。
〈ストーリー〉レナード・バーンスタイン(ブラッドリー・クーパー)と妻のフェリシア(キャリー・マリガン)との生涯の関係を振り返る、非凡で大胆不敵な愛の物語。人生と芸術へのラブレターである本作は、家族と愛について叙情的に描く。
〈スタッフ〉監督・ ブラッドリー・クーパー、製作・マーティン・スコセッシ、ブラッドリー・クーパー、スティーブン・スピルバーグ、フレッド・バーナー、エイミー・ダーニング、

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