「99%、いつも曇り」

 2024年1月13日~19日  シアターセブン
1月29日~2月1日 アップリンク京都
近日公開       神戸元町映画館

正義感が強く、おしゃべりでパワフル。そんな個性的なキャラクターを持つ人はたくさんいるが、自分の中で違和感を抱き、診察を受けると「アスペルガー症候群」と診断された…。トム・クルーズはそれを公表しているし、私の知人の落語家や友人にもいて、なにも特別なことではない。
 「第17回田辺・弁慶映画祭」でグランプリに輝き、東京国際映画祭でも上映された映画「99%、いつも曇り」は、アスペルガー傾向(発達障害グレーゾーン)にあることに悩みを持っている女性・一葉が主人公。その役を演じた瑚海(さいごう)みどりが監督・脚本、編集も手掛けている。不勉強ながら、彼女の出演作、監督した短編映画(「橋の下」)などは知らなかったが、初めて長編で監督を手掛けたこの映画で、さまざまな才能を知ることができた。
 まず、演技者としてー。独特の髪型、ファッションで元気いっぱいに見える一葉だが、心のうちには悲しみや苦悩を抱えている。冒頭、母親の一周忌に集まった親族。叔父は一葉に「子供を作らないのか」と語りかける。彼にとっては、「なんでもない」言葉だが、それは深く傷つける。残念ながら、いまでも日常的にこうした無神経な発言がまかりとおっているのが現実。こうした苦悩、悲しみと闊達な行動の両面が、表情や行動のなかで瞬時に変わる「自然な演技」がさえる。
 一方、監督や編集としても、「特別」とまではいかなくても、「それはちょっと…」という一葉の言動がさりげなく描かれている。例えば、美術教室で先生が「他の人の作品の感想を」と言うと、遠慮なく批評しすぎる一葉。里親をあっせんする事務所にアポなしに行く行動にも。何度も受付のガラス窓をコンコンと叩く様子は、ちょっと過剰な一途さを象徴している。そして、夫婦にとって「光明」を感じさせる、一葉の体調の兆し?もうかがわせるのもいい。
〈ストーリー〉 母親の一周忌で叔父に言われた「子供はもう作らないのか」の一言に大きく揺れる楠木一葉(45)。生理も来なくなって子供は作れないと言い放つ一葉の目には、夫の大地(50)が子供を欲しがっている姿が映る。流産した経験もあり子作りに前向きになれない一葉だったが、自分がアスペルガー傾向(発達障害グレーゾーン)にあることに悩みを持っていた。養子を取ることを薦められるが、一葉と大地の間に、次第にズレていく。
監督・脚本・編集 / 瑚海みどり
出演/永楠あゆ美 Ami Ide KOTA 曽我部洋士 亀田祥子 月田啓太 吉岡礼恩 秋葉有嬉 根口昌明 野井一十 井上薫 塾一久,ありす 美加里 矢島美藍 遠藤百華 露木心菜 露木容子 伊藤慶徳 田中栄吾 石毛笑子 吉岡優花 程塚さくら 松本亜鐘。撮影 / 須藤しぐま 照明 / 西野正浩 録音 / 三村一馬 美術 / 求愛行動 yui 衣裳 / 栗田珠似 メイク / 渡邊夏生 監督補 / 小宮淑 助監督 / 永峰靖之 音楽 / 34423 製作・配給 / ©35 Films Parks

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