OSK日本歌劇団「大阪ラプソディ」
2024年2月8日~12日
扇町ミュージアムキューブ

 テレビ小説「ブギウギ」で〝知名度〟がアップした笠置シヅ子と服部良一。このミュージカルは、2人をモチーフにして、レビューやジャズなどのショービジネスのおける道頓堀ジャズや戦時下での苦悩などを描いた作品(脚本・演出・北林佐和子)。4月・松竹座の「レビュー 春のおどり」、7月・南座の「レビュー・IN KYOTO」、8月・新橋演舞場の「レビュー 夏のおどり」を最後に退団する楊琳(やん・りん)、舞美りらが〝話題の2人〟を演じている。楊は「オリジナルの人物と捉えています」、舞美は「笠置さんがモデルというよりも同じ劇団にいたという感覚です」とゲネプロ終了後の囲み取材で抱負を話したとおり、モデルをリスペクトしながらも、また違う人物像を描いている。
 登場する服部良太郎は、もちろん作曲家という役柄。幼い頃にハーモニカに親しんだことで作曲の道を歩むことに。なかでもジャズに魅せられていく。「道頓堀ジャズ」と言われるジャンルのように、モダンジャズなどとはちょっと趣が違う。そういったことを調査・研究している知人によると、「当時の日本の奏者は、陸軍海軍の軍楽隊出身者が多く、リズムを刻むのはチューバ(管楽器)で本場のドラム(打楽器)とは違うものと言える」そう。なるほど!と思った次第。一方、舞美が扮する三笠桜子は、松竹楽劇部に所属しているところ、皇族が三笠宮と名乗ったことで、笠置に改名する前に名乗っていた三笠というのは笠置と共通するが、違うキャラクターで、可憐な女性と描かれている。彼女は貴族と恋をして成就する。
 劇中劇として、松竹楽劇部のレビューシーンが登場。オリジナル曲もあるが、服部良一の「大阪ブギウギ」「東京ブギウギ」「蘇州夜曲」も登場。なかでも、彼がOSKのために作った「ビロードの夢」は貴重。いまでは「桜咲く国」がよく知られているが、この曲は1949年の「秋のおどり」のテーマ曲として初めて歌われ、あやめ池での「秋のおどり」、福井県の武生公演などで使われたという。 楊「100周年記念公演から久しぶりに歌いました。独特なメロディーで、ご縁を感じます」と話した。
 再び、「ブギウギ」を引き合いにするが、羽鳥善一(草薙剛)が復員して来るあたりは予想以上にあっさりと描かれていたが、この舞台ではそこが重要なものとして綴られている。戦争や震災への復興に、音楽などのエンタテインメントが役に立つのか?! という現代にも通用するテーマをつきつけている。
 そんな服部の前に三笠をはじめ、劇団員たちが現れる…。なぜか、「雨の夜、三十人のジュリエットが還ってきた」(作・清水邦夫、演出・蜷川幸雄)という舞台を思い出した。空襲のために亡くなったり、離散した歌劇の劇団員が、あるデパートに現れるというストーリーで、福井県に実在した「だるま屋少女歌劇団」からイマジネーションを膨らませた作品だった。
 そして、最後は現在のOSKレビューが繰り広げられる。その変わり目がちょっと唐突には感じたが、華やかでダイナミックな歌と踊り、最後は「東京ブギウギ」でいっそう明るく楽しい気分になった。
〈あらすじ〉大正12年に発生した関東大震災で、 大阪は多くの移住者を受け入れ、 首都をしのぐ栄華の時代「大大阪」を迎え、 道頓堀界隈はジャズが鳴り響き、 松竹楽劇部のレビューが人気を博した。 特に、 ダンスの得意なスター三笠桜子(舞美りら)と、 新進音楽家、服部良太郎(楊琳)の作曲によるモダンな場面は観客を魅了した。一方、三笠の熱狂的な支援者である貴族、 織田雅道(華月奏)は良太郎と三笠の仲を疑い、敵視する。 やがて日本は戦火の渦に巻き込まれることになる。 ジャズなど外来文化は敵性とみなされ、 レビューも戦時色の強いプログラムを上演せざるを得なくなった。 混乱のなか道頓堀から三笠の姿は消え、 良太郎も軍隊に召集される。戦後。 良太郎は命からがら上海から引き揚げたものの、 大阪の街は焦土と化していた。活動再開を期待する声をよそに、 心を病み新たな音楽をつくれずにいた良太郎のもとに、不意に三笠が訪ね、 かつての仲間やライバルが次々と集まってくる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA