少女歌劇団ミモザーヌ 冬公演
「Love Letter」
   2023年12月23日、24日
      東京・博品館ホール
   2024年1月6日、7日
      大阪・YES THEATER

 少女たちの歌声で「泣く」とは思っていなかった。吉本興業がプロデュースして、2020にスタートしたこの少女歌劇団。発足当初から私なりに注目していて、節目となる公演は観続けている。11歳から19歳の彼女たちは、回を重ねるごとに身体的なことがもちろんのこと、表現力や自らの個性・アイデンティティを発揮する技量など、「成長」を続けていることに、毎回新鮮な感動を覚える。正直言って、初期の頃は「はらはら」するような危なげさえ感じたが、いまは「安心」してパフォーマンス、ショーを楽しめるようにもなった。
 それというのも、「促成栽培」で育てるのではなく、20歳で卒団という「限られた時間」のなかで〝表面的な部分〟だけではなく基礎を習っているからだろう。歌やダンス、演技はもちろんのこと、体幹を鍛えることやアクロバット、日舞、華道などもカリキュラムに入っているという。ダンスを例にあげても、リズム感は、若い世代で天性として持ち合わせていることも多いだろう。それだけにとどまらず、和ものや世界各国のダンスといった「舞台人」としてのショーダンスが登場するのも、この劇団の大きな特徴と言えるだろう。写真をアップした「セットリスト」にあるように、今回の公演でも、フラメンコもあれば「木遣りくずし」といった着物姿での日舞も披露。総合演出の広井王子氏によると、「今後はマンボや剣舞もやっていきたい」という。
 冒頭にあげたように、思わず目頭が熱くなったのは、「イヨマンテの夜」だった。1950年に作詞・菊田一夫・作詞、作曲・古関裕而、歌・伊藤久男でレコード化されたこのメロディー。4年前のテレビ小説「エール」にも登場した人物、楽曲だが、やはり〝知られざる名曲〟といえる。それを、2人の少女がまさに熱唱したのには、圧倒された。その後、YouTubeでいろいろな歌手がカバーして歌っているのをチェックしたが、テクニックで巧みに歌いこなしているものが多く、彼女たちのようなストレートに訴えかける歌唱は見当たらず、それが胸を打ったのだろう。
 ほかにも、オリジナル曲や懐かしいメロディーなどバリエーションあふれる楽曲を、さまざまな見せ方(魅せ方)で披露していった。今回は20歳を迎えた第1期生・いまもりまなかの卒団公演でもあった。そんな彼女が最後に歌ったのは、山口百恵のラストシングル「さよならの向こう側」。これも泣かせる…。
欲を言えば、今後、「ユニゾン」だけでなく「ハーモニー」も聴きたいところ。そして、もっと幅広い年齢層にも存在を広めて欲しいとも思う。
※「works」には、同公演のプログラムに寄稿した文章を掲載しています。

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