「お軽勘平」

    2023年12月23日 
    大阪・シネ・ヌーヴォで鑑賞

 シネ・ヌーヴォで開催していた「名画発掘シリーズリクエスト特集Vol3」の1作としてラインナップされていたこの映画(1952年)を観た。私は古本市に行くと、意識して演劇の古いプログラムを探すようにしている。なかでも、越路吹雪が主演した帝劇ミュージカル、東宝ミュージカルなどは、あまりにも昔のことで興味を抱く人が少ないのか、1冊1000円までの比較的安価で手に入る〝掘り出し物〟。その1冊に越路とエノケンこと榎本健一のツーショットが掲載された「お軽と勘平」(舞台での題名)があった。70年ほど前に上演された作品だけに、印刷物でしか楽しむことができないと思っていたのだが…。その作品がマキノ雅弘監督、脚本は黒澤明監督の「七人の侍」(共同執筆)、「生きる」なども手掛けた小國英雄。これは見逃せない!とちょっと早起きして、午前10時の上映を観た。
 正確にいうと、舞台版「お軽と勘平」は1950年に帝国劇場で初演。1952年に東京宝塚劇場でほぼ同じ配役で再演された。この映画は、帝劇版の舞台風景を交えながら、越路が扮する山路吹雪、エノケン扮する羽根木健一らのこの公演中の姿を描いたバックステージもの。山路がこの舞台を最後に結婚引退するというフィクションをまじえたもので、当初期待していた「舞台版の再現」ではなかったが、その雰囲気は充分につかめた
 ミュージカル形式の舞台パートでは「アニーよ銃をとれ」(1946年初演)で流れるアービングー・バーリングの「Anything You Can Do」をいち早く使用。そして、服部良一が作曲による「フジヤマ・ゲイシャ」などのブギウギのリズムで歌い踊るので、このリズムが再注目されているなか、〝いまふう〟にさえ思えた。さらに、山路と羽根木の舞台に賭ける気持ちの違い、楽屋で給料を盗まれた踊り子たちに、羽根木が内緒で大金をカンパするという実際にあった?エピソード。「演技よりも太っていることで笑いが起きる」ことに失望している岸井明に、「俺もそうだ」と吐露する羽根木=エノケンのシーン。全盛期を過ぎた老俳優などもけっこうリアルに描かれていて、いまにも共通するショービジネス界の悲哀を感じることができたのは、予想外の収穫でもあった。
写真は所蔵している、1952年・東京宝塚劇場でのプログラム

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA