「ショータイム!」
2023年12月1日公開
演芸の世界では「色物(いろもの)」という用語がある。漫才や落語とは別に奇術(マジック)、太神楽(だいかぐら、ジャグリング)といった芸を表すもので、寄席の入口に掲げられる看板を、漫才や落語が黒文字で描かれるのに対して、色付きの赤文字なので、そう呼ばれている。上方落語の定席、繁昌亭(大阪)、喜楽館(神戸)でも毎公演に必ず1つは登場し、意外な〈掘り出しもの〉を見つけるのも楽しい。数年前までは、なんばグランド花月(NGK)では「THE 舶来寄席」と題して海外の芸人(パフォーマー)たちが至芸を披露、毎回通ったものだ。
このフランス映画は、そんな寄席=キャバレーを田舎の農場に作った男とそこに参集した芸人たちの物語。奇想天外の発想なのだが、それが実話というので、よけいに興味がそそられる。主人公の農夫が目を付けたのはロープや布を体に巻き付けて空中で舞うエアリアルを演じる女性。彼女を軸に女装しての物まね、催眠術、マジック、ジャグリングもできる姉妹が集まってくる。納屋をキャバレーに改装する男とそれを冷ややかに見ている周囲の人々、そして「「一流」とはいえない人々の様子が、誇張することなく自然に描かれていく。さあ、オープンという時に重大事件が発生!それをどう乗り切るか? こんな「寄席」あれば、ぜったいに通うのになあ、と羨ましくもなる爽やかな映画だった。
〈ストーリー〉フランスの片田舎の酪農家のダビッドは、一家が3代にわたって続けてきた農場を経営危機で差し押さえられそうになる。民事裁判所の判事から2カ月の猶予を与えられた彼は、途方に暮れながら訪れたキャバレーでボニーというダンサーのパフォーマンスに出会い、農場の納屋をキャバレーに改装して勝負に出ようと思いつく。ダビッドはボニーにショーへの出演と演出を持ちかけ、ボニーは個性的なパフォーマーたちを厳しく鍛えあげてステージを完成させていく。しかしオープン前日、思わぬ事態が起きる。
監督・脚本・ジャン=ピエール・アメリス。ダビッド・アルバン・イワノフ。ボニー・サブリナ・ウアザニ。
2022年製作/109分/フランス

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