「現世舞語り」
2023年10月27、28日
近鉄アート館

日本舞踊家としての将来を嘱望されるがあえて流派を飛び出し、独自の舞踊スタイルを追求、創作舞踊家また振付・演出家として活動している伊瑳谷門取(いさやもんどり)。「新伝統」という伝統舞踊と他ジャンル、アートとの融合に取り組む舞踊家で、近年は俳優やモデルとしても活動している實川ふう。宝塚OGの未央一、OSK日本歌劇団の元トップスター・洋あおい。さらに和太鼓、太棹三味線、コンテンポラリー、ヒップホップのダンサーらが出演。それを伝統芸能、OSKなどのレビューにも精通している脚本・演出家の北林佐和子が増田雄と作・演出を担当「垣根を取っ払った」意欲的なこのシリーズは今回が3回目。今回もそれぞれ「独立」した4演目すべて斬新だった。
冒頭の「ふう流踊り」は太鼓、太棹三味線、横笛の生演奏で、スタイリッシュなダンスを展開。日本の祭りと海外のカーニバルのイメージが瞬時に交錯する不思議な感覚で、この公演のコンセプトを理屈ではなく体感できた。続く「Ghost of The Osaka Castle」は、いかにも今風(いまふう)の青年が大阪城にタイムスリップ、淀君と出会う光景をリズム感あふれるヒップホップとしなやかな舞とのコラボで表現。
休憩をはさんで、舞台上にパイプ椅子をセットする老人。なにが始まるのか?と思っていると3番目のエピソード「SDGS 「住み続けられる まちづくりを」へ移行。老人たちが恒例の祭りを今年も催そうとする姿を描く。セリフ部分が少し冗長には感じたが、老人に扮した俳優たちがホンモノ?と思えるほどの役作り。その祭りとは、ヤマタノオロチを操る神楽というだけに、そういった場面(面は1つだけでも、蛇踊りのように)が欲しい気もした。最後は伊瑳谷、未来、實川による「ボケとつっこみ」。関西人特有の日常的な「アドリブ」を「舞語り」という形式で表現するこれも意欲的なもの。おもしろい試みだけに、アドリブを混じることもアリ!でもうすこし長く、くだけた要素もある掛け合いが観たかった。
このブログ「エンタメREVUE」は、ジャンルを超えたエンタテインメントの紹介、批評をコンセプトにしているのだが、まさにそれと共通、今後も期待したい公演だ。
〈上演演目〉
①ふう流踊り=中世、民衆エネルギーの昇華として大流行した風流踊を現代に復活させる。
② Ghost of The Osaka Castle=大阪城を訪れた現代の観光客。時空を超え過去の人物とすれ違う。異顔ジャンルの舞踊が同一空歴史を体現する
③ SDGS 「住み続けられる まちづくりを」=過疎化がすすむ農村住民は老人ばかり。 疫病流行の間、開催できなかった祭りを数年ぶりに開催しようとするが、 用具もマンパワーも足りない···
④ ボケとつっこみ=大阪に住むある家族の物語を丁々発止の舞踊と、ボケ・ツッコミに代表される笑いを融合させて描く
※後日、アーカイブ配信がある。

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