「ちんぷんかんぷん劇場」
第1部 現代劇「60秒の奇跡」(作・見高光義)
第2部 時代劇「勘八身代わり仁義」(脚色・見高光義)
2023年9月9日、10日 クレオ大阪中央
全国の劇場で毎日のように、なにかの演劇、芝居が上演されている。とはいっても、演劇界も他の企業などと同じように〝ガリバー化〟(巨大なものと小さなものとの格差が大きくなる)が進み、巨額の製作費を投じて全国で展開する動きが年々加速。また、〝東京一極化〟も顕著になり、関西を拠点にする筆者としては寂しい思いがある。そんななか、いまは亡き京唄子公演などで修業した見高光義と國米秀一とが「ちんぷんかんぷん」というユニットを結成、この旗揚げ公演を行った。監修を担当している、紅壱子のお誘いで観ることになった。「浪花人情風船団」を主宰し、関西にこだわり活躍する紅をはじめ、松竹新喜劇座員の曽我廼家八十吉、森光冬、OSK日本歌劇団OGの洋あおい、宝塚歌劇団OGの未央一、関西の商業演劇で存在感をみせる鍋島浩、田村ツトムら40人が出演。さらに、特別ゲスト
にドリフターズの加藤茶という豪華版。「ちんぷんかんぷん」2人の意気込みが伝わってくる。
第1部は事故で亡くなった4人が四十九日を前に、「60秒」だけ近親者に会う物語。前半は町の人々のにぎやかな交流が描かれ、なぜかアマチュアのフランダンス、南京玉すだれも。前者はチケット販売の関係でわかるが、南京玉すだれは、パフォーマンスとしては? それが後半に「最期の別れ」とシリアスに。後ろの座席にいた2人の女性が鼻をすする音が…。ほぼ予想できる展開ではあったが、亡くなった4人のうちの1人が、「60秒」を他人に譲るというのは意表を突き泣かせた。新喜劇の森が「軸」になる人物を生き生きと演じていたのが印象的。
第2部は大衆演劇をほうふつさせる〝母子もの〟。さすが、見高と國米は股旅姿、立ち回りが板についている。狂言半ばでは、加藤がおなじみの恰好で登場。アドリブも交えながら、ひげダンス、♪ちょっとだけよ~を披露、これがなんでもありの商業演劇(娯楽作品)の懐の深さ。そうした芝居を引き締めたのは、目が不自由な母を演じた紅と大前田英五郎に扮した八十吉。2人の掛け合い、さらに母子の対面とそれを見守る英五郎。手を握り、それが実の息子ではないと察する母の一瞬のしぐさにグッときた。
役者たちが活躍する場として、不定期であっても「ちんぷんかんぷん劇場」第2回公演を期待したい。
演出・見高光義、演出補・國米秀一、監修・紅壱子、潤色・南条好輝、コント指導・加藤茶