「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」

2023年7月21日全国公開

1996年に公開が始まったシリーズの第7作。主人公イーサン・ハントが過酷なミッションをクリアしていくヒット・シリーズだ。監督はトム・クルーズ主演「ワルキューレ」の共同脚本の時からクルーズとタッグを組んでいるクリストファー・マッカリー。今回は〝人類を破滅に導く新兵器〟を題材にしたストーリーで、2部作の第1部。つまり前後編の前編にあたる。
トム・クルーズが演じているイーサン・ハントは、過去に心の傷を負っているキャラクターで、若く華のある人物というよりは独特の暗さを持っている。しかし、過去の傷を乗り越えてきたことから、暖かい面を持っているのである。ハントは、国が〝正義〟とする汚れ仕事をしているのにもかかわらず、個人としての倫理観を前面に打ち出すことがあり、これは本作の伏線としても大きな役割を果たしている。無論、現実にスパイ組織の中でそんなことはあり得ない。実際の会社やコミュニティにもここまでする人間は居ないが、こういうリーダーが居たらいいのに、というアメリカの理想の一端が見えてくる。
疾走する列車の上で主人公が敵と繰り広げるバトルにも、圧倒される。列車がトンネルに入る度にヒヤッとする仕掛けは、特撮だとわかっていても手に汗握る。主人公が振り落とされるか、敵が振り落とされるか。何人の人物が列車の屋根に乗ってアクションに絡んでくるか。伝統的アクションシーンと言っていい疾走列車バトルは、公開中の「インディー・ジョーンズと運命のダイヤル」でも採用されているが、インディー・ジョーンズ版より粘り気のあるシークエンスになっている。
トム・クルーズ単独のバイクジャンプ・シーンも話題だが、本作を観ていていちばん面白いと思ったのは、ヘイリー・アトウェルら、4人の女優が確かな演技力を見せていることである。彼女らが〝華を添える〟と言う次元でないのは、既に到来しているAIの時代に、残って行く映画を出そうという制作者の決意の現われだろう。
本シリーズのもとになったテレビ版「スパイ大作戦」は、敏腕スパイ・エージェントのチームワークで、比較的、短時間で敵を罠にはめる構図が多かったので、見終ったあと、何だかこちらがちょっと悪いことをしたような気がしたのだが、今回の映画版は、敵が(おそらく)巨大で狡猾。なので、純粋に楽しめる。(2023/アメリカ/163分)
配給 東和ピクチャーズ
⒞2023 PARAMOUNT P ICTURES.
※この映画は、辻則彦も感想をアップしています。併せて、ご一読ください

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