前田哲監督初の時代劇コメディ

2023年6月23日から全国公開

浅田次郎の同名原作を大阪出身の前田哲監督(50)が映画化した新作「大名倒産」(松竹配給)が23日から全国公開される。前田監督初の時代劇コメディで、神木隆之介(30)が主人公の若殿を演じている。社会派アクションからコメディまで幅広いエンタメ作品で知られる前田監督にとって今年は「ロストケア」「水は海に向かって流れる」に続く3本目で「絶好調」と宣言している作品。
越後・丹生山藩で鮭売りをしている小四郎(神木)が、ある日、父の作兵衛(小日向文世)から「実はあなたは徳川家康の血を引く大名の跡継ぎで…」と告げられて、丹生山藩のお城の若殿となるところから波乱のドラマは始まる。父や母(宮﨑あおい)、幼なじみのさよ(杉咲花)らとの別れも束の間に、上がった城で本物の父親の先代藩主・一孤斎(佐藤浩市)から「藩に100億円の借金があり、大名倒産すれば藩主のお前は切腹だ」と告げられ仰天する。
子役から現在NHKで放送中の「らんまん」までいろんな役をこなす神木が、これまでにない役どころで巻き込まれ型殿様を演じてさすがである。佐藤の欺瞞的な父と、少しずれている2人の兄、新次郎(松山ケンイチ)と喜三郎(桜田通)、家来の平八郎(浅野忠信)、佐平次(小手伸也)ら曲者に囲まれ小四郎のおかしなお城改革がスタートする。幼なじみのさよも応援に駆けつけ、小四郎の借金返済術が見どころだ。
前田監督は「ロストケア」で検事(長澤まさみ)と犯人(松山ケンイチ)の対決、「水は海からー」では少女(広瀬すず)のシビアな生活を描いたが、「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」「老後の資金がありません」のような喜劇センスを生かしてテンポ良く物語を進めていく。ほかに石橋蓮司、キムラ緑子、勝村政信、高田延彦、梶原善、カトウシンスケ、ヒコロヒーなど芸達者が大勢共演。大友良平の軽快な音楽に乗って前田エンタメ映画の面白さが展開する。お家の一大事に一家の主人がいかに振る舞うかは、今の時代と全く重なり、浅田原作を借りての人生逆転ゲームはリアルでもある。

写真は「大名倒産」の神木隆之介(中央)ら。(C)2023「大名倒産」製作委員会

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