「デビュー15周年 三山ひろし特別公演」
2023年4月14日~25日  新歌舞伎座

休憩(30分)を入れて3時間の公演。「たっぷり!」という表現がふさわしい、三山のサービス精神あふれる舞台だった。演劇には、さまざまな表現方式があって、〈便宜上〉、ジャンル分けされているが、根底には「観客を満足させる」というのは共通していると思っている。そんななか、大劇場である程度の期間にわたって上演され。「座頭」が歌手であった場合、商業演劇という言葉が使われる。大阪では、梅田コマ劇場(一時期、「飛天」と改名)はいまはなく、新歌舞伎座はその代表的な劇場で、歴代の芝居もできる歌手が公演を行ってきた。
近年では、三山ひろしがそういった存在で、この劇場では5回目。初回から観ているが、彼の表現力は確実に高くなり、掛ける芝居も「難易度」が高くなっている。第1部の時代劇「裲襠(うちかけ)松次郎~拙者の生き様~」(脚本・演出・池田将之)は、山本周五郎、司馬遼太郎の小説にあっても違和感がない?と思えるほど、なかなかよくできた物語。女性の衣裳を畳んだり干したりするのが仕事の松次郎は、武家社会では陰口を叩かれ、いまで言うパワハラを受ける存在。幼馴染の健太郎(大沢健)も出陣の時に貝を吹いたり太鼓を叩くのが家業で、そんな機会もなく同じような境遇にいた。そんな健太郎が罠にはめられて出奔、松次郎は健太郎を討つように命じられる…。上からの命令が絶対的であった時代に、これを松次郎はどう対応するのか、とひきつけられる。そして、周到な「伏線」が解決するのも見事。三上は7分間にわたる殺陣も達者にこなし、堂々とした主役を演じた。
第2部「みやまつり 2023」(構成・演出・宮下康仁)は、オリジナル曲からカバー曲まで1時間30分にわたってたっぷり。個人的には、舞台「近松心中物語」(演出・蜷川幸雄)で道行の場面で流れる森進一が歌った「それは恋」が、また違う味わいがあって心に沁みた。さらに、「愛燦燦」、津軽三味線と尺八の演奏による「風雪ながれ旅」、さらに長編歌謡浪曲「元禄忠臣蔵 赤垣源蔵」と、美空ひばり、北島三郎、三波春夫とレジェンドたちの歌を受け継ぐ様子に、演歌も「伝承芸」だと感激したのだった。

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