ドキュメンタリー映画「ただいま、つなかん」
2023年3月4日から第七芸術劇場で公開

宮城県気仙沼市唐桑半島の鮪立(しびたち)にある民宿を営む菅野一代さんと東日本大震災で出会った若者の温かい交流の10年間を追ったドキュメンタリー映画「ただいま、つなかん」(製作著作・文化工房)が3月4日から大阪の第七芸術劇場で公開される。震災からコロナ禍の時代を通して「一代さんはよそ者と地元人の架け橋になった」という風間研一監督(45)に話を聞いた。
菅野和享さんと一代さんは美しい入江を見下ろす高台の家に住み、100年続く牡蛎の養殖業を営んでいた。2011年3月の震災で町は津波にのまれ大きな被害を受けた。「菅野さんの家も3階まで波が押し寄せたが、何とか形をとどめ補修しボランティアの若者の宿泊に提供。半年間で延べ500人を受け入れた。その時生まれた絆が、13年秋に民宿『唐桑御殿つなかん』に生まれ変わり、今日までその交流が続いている」
「ご主人の和享さんは無口な漁師で一代さんは活発な女将さん。僕は一代さんの記事を地元新聞で読んですぐに取材を申し込んだ。12年2月のことで、彼女は笑顔で『ようこそ』と僕を迎えてくれた。『唐桑のマドンナ』と呼ばれ、ボランティアの若者たちに慕われていた。彼らの生活と触れ合いをカメラで追いかけた。若者の何人かはボランティアを続けながら、この町に移住して来る者が現れ驚かされる。よそ者が地元人になるという現象だ」
一代さんは岩手県久慈市出身で、宮城県気仙沼市の菅野さんに嫁いだ。「私が元々よそ者で、地元人になった人間。都会の若い人たちが移住し、地元の人と結婚し、新たなファミリーを作る。自分のことのようにうれしかった」と一代さんの笑顔がはじける。しかし17年の3月、悲しい海難事故が発生し、一代さん一家が巻き込まれる。「震災だけでなく、またも…」と彼女は悲嘆に暮れ、海を見るのもためらい、沈み込む。「それでも彼女は『強い人』で、立ち上がる。彼女を支えたのは周囲の若者たちと、民宿を訪れる客たち。そしてやがてコロナ禍で逢えなかった人たちと再会し、元気を取り戻していく…」
気仙沼でカフェ店を開く俳優の渡辺謙がナレーションを担当。音楽はみなと気仙沼大使の岡本優子。宮城県出身の伊達きみお(サンドウイッチマン)や「ほぼ日」の糸井重里も一代さんを応援している。
写真は「映画になって『一区切りに…』と一代さんは話しています」と話す風間研一監督=第七芸術劇場

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