ドキュメンタリー映画「日の丸〜寺山修司40年目の挑発〜」
シネ・リーブル梅田で上映中

1967年にテレビで放送されセンセーショナルな話題をまいたドキュメンタリー「日の丸」から55年を経て、もう一度「あなたは何者?」を問うドキュメンタリー映画「日の丸〜寺山修司40年目の挑発〜」(TBSテレビ製作、KADOKAWA配給)が大阪のシネ・リーブル梅田で上映されている。監督を務めたTBS局ドラマ畑の佐井大紀ディレクター(28)に話を聞いた。
寺山が構成した「日の丸」の内容は、街頭で「あなたは日の丸をどう思うか?」「あなたは外国人の友達はいますか?」などと問いかけるインタビュー集だ。聞き手は「記録用紙」に徹し、何も問い返さず質問だけを相手にぶつける。「僕はこれを会社の新人研修で見て衝撃を受けた。放送当時に抗議が殺到し、日の丸への侮辱と問題視されたが、67年といえば東京オリンピックが終わり、3年後に万博という時期で、今の時代と同じ状況があり、もう一度同じ質問をしたらどうなるかと考え映画を作った」
「16歳のとき寺山のエッセイ集の本を読んで、彼は社会のものさしじゃない生き方をしている」と興味を持ち、自ら「個」という「私」になって「自分は何者? というアイデンティティを探していると思った。僕も同じように個になり、セルフドキンタリー的に対峙しようと決めた」。当然、インタビューされる人たちの答えは昔と今では違うことが多いが、「予想外なこともあり、それはそのまま映画を見る人に届けばいい。当事者の気持ちになってもらえれば…」
「寺山も当時、質問の答えがどうなるか余り考えなかったと思う。それぞれの答えがあることが事実で、虚構と現実の狭間がそこにある。映画『田園に死す』(74年、寺山監督)のラストシーンのような文脈につながる。昔は若い女性インタビュアーで、今回は僕自身がそれをやっており映像との距離感が違うと思う」。女性インタビュアーの一人が現代に登場するシーンがあるが「行方不明だったもう一人の女性がつい昨日見つかりました」と佐井監督は相好を崩す。
次回作「カリスマ〜国葬・拳銃・宗教〜」をすでに完成させた。安部首相暗殺事件の犯人と昔の永山則夫(昭和の連続射殺事件の犯人)が対比される。大阪では3月24日からシネ・リーブル梅田で始まる「TBSドキュメンタリー映画祭2023」で上映される。

写真は「質問の答えに見え隠れするものを…」と話す佐井大紀監督=シネ・リーブル梅田

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