「逆転のトライアングル」
2023年2月24日に公開
アカデミー作品賞、監督賞。脚本賞にノミネート

イケメン・美女であっても、金持ちでも、賢くても、ある環境に置かれたら「そんなの関係ない」ことを描いた作品。美男美女のラブストーリーやサクセスストーリーといった「ドラマの定番」を見事に覆して、見終わった痛快な気分になった。
豪華客席に乗り込んだ彼ら彼女ら。セクシーな水着、マッチョな体躯をアピールするように太陽を思いっきり浴びるカップル、金にものを言わせて船員たちに無理やり「泳ぐ」ことを要求する金持ちの妻。そんな乗客たちの無理難題にも忠実に答える女性乗組員、酒浸りの船長。そして、生活のために黙々と与えられた仕事をこなす従業員。当たり前のようなそんな図式が、船の遭難から孤島にたどり着いたことで、まさに「逆転」する。
そこで、絶対的な意味を持つのは、金やルックス、学問などは関係なく、この状況で生き抜くサバイバル能力。リーダーとなったのは、船では黙々とトイレ掃除をしていたアジア系の女性。火をおこし、魚をとるなど、たくましい。〝普通のドラマ〟なら、それをみんなで分け合って、いつしかヒエラルキー(階級)を超えた友情が生まれる…のだが、この映画のすごいところは、そんな図式を超えたリアリティー。自分が苦労して獲得したものを、なぜみんなに分けるの?という人間心理の奥底がきっちりと描かれている。持っていたお菓子を与えるということで、ある意味での「上下関係」が生まれていく。さらに、もっと深く彫り込んでいるのが、「征服欲」。風雨を避けるために、カプセルに入る権利を持つリーダーは、イケメンを指定して、2人で夜を過ごすことになる。そうして、人間のエゴイズムをリアルに描きながらも、そこに笑い、ウィットを混ぜ合わせる脚本・監督のリューベン・オストルンドの手腕に感服した。すでに、カンヌ映画祭パルムドール賞を受賞しているが、アカデミー賞での受賞も期待できる。
配給:ギャガ
コピーライト:Fredrik Wenzel(C) Plattform Produktion
※岩永さんの記事もご参照ください

Edit
映画『逆転のトライアングル』 公式サイト (gaga.ne.jp)

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