映画「餓鬼が笑う」

2月3日から京都みなみ会館、同4日から大阪シネ・ヌーヴォ、神戸元町映画館で公開

骨董屋を目指す若者が世の中の荒波や不条理にもまれながら「しぶとく生きる」ことを肯定する青春映画「餓鬼が笑う」(ブライトホース・フィルム/コギトワークス配給)が近く関西で公開される。自主映画出身の平波亘監督(44)は「デビュー15年目の今、闇を突き破りたくて作った」という。

2008年にぴあフィルムフェスティバル・PFFアワードで入選した新感覚コメディ「スケルツォ」で監督デビューし、その後8本の長編を発表。「今回は助監督で付いた時のプロデュ—サーで古美術商をしている大江戸康さんから骨董屋を目指す若者・大貫大を主人公にした自作脚本に興味がないかと声をかけられた。20年のコロナ禍で先が見えなかった時で、それを突き破る作品にと企画に乗った。生死の境をさ迷う男の物語にラブストーリーを加え幻想的に描こうと思った」

長野県出身で映画、演劇の専門学校ENBUゼミナールを卒業。鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」、寺山修司監督の「さらば箱舟」のファン。「自身のこれまでの集大成的な作品に」という思いも重なった。「骨董品の勉強をすると1品が何千万円もするのがあり、その真贋は人間の記憶を巡る話になるのではないか。主人公の大(田中俊介)が商売に失敗して自殺した父親(川瀬陽太)に冥界で会うところから物語が交差して展開する」

「古本屋で夜学に通う看護師の佳奈(山谷花純)と出会ってからの恋の物語も夢なのか現実なのか。そしてなじみの骨董屋の先輩・国男(萩原聖人)が交通事故で亡くなり、彼の『困った時は笑え』という言葉の意味を考える大は、恋人の佳奈に振られ、闇の中の女神・如意輪(川上なな実)の助けを得る。生死の境は見えないが、笑うことは人間の知恵であり、しぶとく生きることにつながる」

一方の佳奈は病院の患者の絵描きにスケッチされて描かれた自分の姿に驚かされる。絵を描く老人に田中�(さんずいのみん)が扮して映画を引き締める。大が住むアパート管理人に片岡礼子。ほかに柳英里紗、夏目大二郎らが共演。「この映画を見て現実を打破し次のステップに」と平波監督は訴えている。

平波監督は次作「サーチライト—遊星散歩—」を撮り終えている。今度は少女が疾走する青春映画だ。

写真は「生と死の世界はパラレルワールドかもしれない」と話す平波亘監督=大阪のシネ・ヌーヴォ

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