「Mr.Moonlight ミスター・ムーンライト」
2023年1月27日から公開

ビートルズを題材にした映画はたくさんある。「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」をはじめとする彼ら自身が出演したドラマ、ドキュメンタリーもあれば、1964年のアメリカ公演の時に、彼らの部屋に侵入した女性ファンを描いた「抱きしめたい」(1978年)、人気が沸騰する前に脱退したスチュアート・サトクリフを描いた「バックビート」(1994年)といった〝外伝もの〟も。さらに、1964年の日本公演については、厳重な警備が1970年の日米安全保障条約の改定に向けの〝予行演習〟だったという観点から書かれた「ビ-トルズ・レポート」があるし、NHKの「アナザー・スト-リーズ」でも取り上げられるなど、さまざまな視点で紹介されている。
この映画も、1966年6月30日から7月2日に日本武道館で行われた日本公演が実現するまでの経緯、当日の熱狂ぶり、さらに「ビートルズ以前」に日本の音楽状況などを、多くの関係者、アーティストの証言によって描かれている、
その時、私は大阪に住む14歳。もしあと5年遅かったら、なんとしてでも行っていたかもしれない。といって熱狂的ファンというわけではなく、日本国中で話題が沸騰したイベントの〝目撃者〟になりたかったからかもしれないが。公演の模様は日本テレビ系で録画中継され、7月1日午後9時から1時間(ビートルズが演奏したのは30分程度を、当時50歳で、洋楽などには興味がない父親と一緒に白黒テレビで見たのをいまでも覚えている。1962年当時は日本でほとんど知られていなかった彼らを、〝やらせ〟も含めて売り出した東芝音楽工業のレコードディレクター・高嶋弘之(高島忠夫の弟、高島さち子の父)のエピソードが楽しい。また、これまで本などで紹介されていた彼らの日本公演招聘の経緯も、〝新事実〟が明らかになる。読売テレビ(読売テレビ(101歳から6歳までの人々が、好きな曲を話すエンドロールに、ウルッとした。近年、「調査報道」という言葉を聞くことが多くなかったが、これも綿密な調査で成立したドキュメンタリー映画の佳作だ。

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