レジェンド&バタフライ
2023年1月27日から公開
木村拓哉が「ぎふ信長まつり」(2022年11月6日)に参加したことで、「キムタクが主演する時代劇」というこの作品の知名度が一気にアップした。織田信長の生涯を描くとあって、波乱に富んだ人生ストーリーの骨子はだいたいわかってはいたが、いい意味で予想に反して、揺るぎない信念を持ち続ける「歴史上の人物」ではなく、カッコつけで、背負った環境や状況によって「鬼」にもなった人間としてとらえる娯楽映画として楽しめた。大沢啓史監督による「2時間45分の大河ドラマ」とも言えるだろう。
政略結婚によって信長に嫁いできた濃姫(綾瀬はるか)。2人は「厳かな初夜」のはずだったのだが、「上から目線」の信長に怒った濃姫は力づくで抑え込んで「くんずほぐれつの大格闘」。うむ?これは〝よくある時代劇〟とは違うぞ、と予感して期待が膨らんだ。しかも、義父が殺されたというのに、なかなか出陣しようとしないあたり、深謀遠慮タイプかなと思わせておいて…。戦さを重ねるうちに、「鬼」と化していく。木村はりりしさを保ちながらも、苦悩する弱さを見せる。さらにそうした夫の姿についていけないと感じた濃姫が去ってことで、いっそう鬼気迫る形相になっていく。絢爛豪華な城などの景色、迫力ある戦闘シーンを交えながら、そうした人間ドラマの側面を描いているので、「歴史もの」があまり得意でない私も、見入っていった。さらに、監督の手腕がさえるのは群衆シーン。エキストラを使う場合、どうしても表情に乏しい人々も映し出されていて、それはないだろうと興ざめすることがあるが、この映画ではエキストラもちゃんと「そこにいる」。細部まで綿密に演出する才能が光っている。
前半は「若き信長」の人間らしいやんちゃな姿、後半は武将としての才能と苦悩、そして裏切りという歴史的な史実に基づく経緯。どちらかに好みは分かれるかもしれないが、3時間弱を凝視してみることができる映画だ。
映画『レジェンド&バタフライ』公式サイト|1月27日(金)公開 (legend-butterfly.com)