2023年1月13日から公開

SHE SAID シー・セッド その名を暴け

2017年に発表され、映画界のみならず、アメリカ社会に大きな影響を与えた記事を基にした人間ドラマ。大物映画プロデューサーによるセクハラやレイプを告発した、2人の新聞記者の物語である。ミーガン(キャリー・マリガン)とジョディ(ゾーイ・カザン)はニューヨーク・タイムズの記者。2人は映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが、社員や俳優にセクハラやレイプを繰り返していたことを掴んでいたが、被害者達は当時のことを話したがらない。被害者の多くは業界に権力を持つワインスタインに圧力をかけられたり、不利な条件で示談にさせられていたのだ。記者たちはワインスタインの周りに居た人間にも接触し、被害が拡大した要因を探っていく。
映画界の構造的な性差別を描いていると聞いて、最初はひどい男ばかりが出てくる作品を連想したが、ドラマは記者の調査を助けた、ある男性の存在も印象的に描いている。男性VS女性の構図だけではなく、人権というテーマを深く掘り下げたシナリオなのである。製作にブラッド・ピット、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナーら「それでも夜は明ける」「ムーンライト」など、人権問題を扱った映画のプロデューサーが名を連ねているのもうなずける。ワインスタインが興した会社ミラマックスは、当時いい作品を製作し輝いていたので、本作を観ていると複雑な想いに駆られた。記者のミーガン達が、高い職業倫理と強い仲間意識を持って取材に当たらなければ、被害者も心を開かなかっただろうとも思う。劇中のセリフにもあるが、会社の創設者と社員ではパワーバランスが全く違う。記者たちはワインスタインによる、権力の濫用と果敢に闘ったのだ。しかし主役の記者たちより勇気を振るったのは、被害者たちの方に違いない。彼女たちの切実な言葉が胸に刺さるドラマである。監督は「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」のマリア・シュラーダー。
※辻則彦も同映画のことをアップしています。併せて読んでいただければ
配給: 東宝東和
コピーライト:(C)Universal Studios.AllRightsReserved.

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