坂東玉三郎×鼓童初春公演「幽玄」
大阪松竹座 2023年1月5日~28日
近年、私にとっての「観劇初め」は大阪松竹座での坂東玉三郎公演が多い。主に舞踊公演なのだが、新春にふさわしいあでやかな舞いは心地よく、1年のスタートを切る晴れやかな気持ちにさせてくれる。
今年は、5日初日と例年よりも少し遅く、「観劇初め」(6日に観劇)ではなかったものの、いつもよりにぎわう道頓堀の風景もあって、まさに「幽玄」(気品があり優雅)で、おだやかな気分にひたった。
今回は太鼓芸能集団の鼓堂とのコラボで狂言の3演目を2幕で上演する異色作。幕が開くと、羽織袴に正座でずらり並んだ男性陣が細かく太鼓のリズムを刻む(締太鼓)。それがときにかすかに、そしてときには強く響き、さらに舞台後方から前方に移動すると迫力も増し、それが潮の満ち引きを象徴している。能「羽衣」は浜に降り立った天女を描く物語。花道から登場する天女は、伯竜に出会い心触れ合うが天へと昇っていく。能の物静かな表現とはまた違い、躍動感さえもある物語になっている。玉三郎は抑制した舞で神秘さを表現。
第2幕での2つの目の演目「石橋(しゃっきょう)」は雰囲気が一転、大小さまざまな太鼓の響きを背景に、三頭の獅子が白い毛が力強く振るダイナミックな構成。そして最後は、歌舞伎でもよく知られる「京鹿子娘道成寺(きょうかのうこむすめどうじょうじ)」と能を融合させた「道成寺」。白拍子に扮した玉三郎、舞台上には数多くの灯篭がともされ、幻想的な空気につつまれた。しかも、この作品はそれだけは終わらない。鐘の中に姿を隠した白拍子は、おどろおどろしい化粧をほどこした蛇体に変身。「あでやかさ」という表現だけではない玉三郎の舞い、鼓童の太鼓や笛などが、長く演じ続けられているこれらの作品に新たな魅力をアピールしていた。
写真は「道成寺」の一場面。(C)松竹
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