映画「ファミリア」
1月6日から大阪ステーションシティシネマなどで公開

「八日目の蝉」「いのちの停車場」などの名匠、成島出監督(61)と役所広司(66)が組んだ新作「ファミリア」(キノフィルムズ配給)が1月6日から大阪ステーションシティシネマなどで全国公開される。焼き物の陶器職人に扮した役所が一人息子とその嫁、周囲の人たちとどう生きるかを描いた作品。「痛みが分かるリアルで優しい人間たちを」という成島監督に話を聞いた。
成島監督は脚本家としてこの世界に入り、奥田瑛二主演の「恋極道」(望月六郎監督)などアウトロー世界の脚本を執筆し評価され「本来監督志向だった」と役所と組んで「油断大敵」(2003年)で監督デビュー。以後、役所と再度組んだ「聯合艦隊司令長官 山本五十六」などを手がけ社会派エンタメ監督として活躍。その役所と三度の顔合わせで「今の混沌の時代の中で、傷の痛みが分かる人間をリアルに描きたかった」とメガホンを取った。
オリジナル脚本は「オリヲン座からの招待状」などのいながききよたか。「愛知県瀬戸市の窯業の家に生まれた彼が書いたプロットを読んで映画化を決めた。そこには嘘のない事実と、リアルな人間が交差して描かれ主人公の陶芸家・神谷誠治は役所さんにやってもらいたいと思い声をかけた。焼き物の修行を半年間して撮影に入ってもらったが初日はすでに主人公の顔になっていた」と経緯を語る。
妻を亡くし一人で窯業をしている誠治が、アルジェリアでプラントエンジニアをしている一人息子(吉沢亮)が現地の女性(アリまらい果)を連れて一時帰国するところからドラマは始まる。家の近くにある団地に在日ブラジル人が多く住みにぎやかだが、そこでブラジル人と日本人の間で騒動が起きあることで親しくなった若いマルコス(サガエルカス)たちと半グレの梅本(MIYAVI)らの抗争に発展し、折しも外国に戻った息子夫婦が現地でテロに巻き込まれるという事件が起きる。
「撮影はコロナで一度中断し完成が1年半伸びた。そうして現実ではロシアのウクライナ侵攻があり、コロナ禍とともに今世界が混沌としている。撮影はそれ以前だが、焼き物の町でひっそり生きていた男にもその影がしのび寄って来るような気がする。分断が深くなって、希望が見えにくくなっている。そこで主人公がどう対応するか。それは高倉健さんの男気に似ているかもしれない」
半グレを演じたMIYAVIはギタリストでUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)親善大使で「映画の役の真逆のようだが、その痛みが分かる人に演じてもらえて物語がリアルになった」と振り返る。主人公の側にいる友人役に佐藤浩市が扮し、室井滋、松重豊、中原丈雄のほか、ワケドファジレ、スミダグスタボ、シマダアランらブラジル人が映画初出演で好演している。主人公の住居と焼き物の「穴窯」は千葉県茂原市に建てられた。ブラジル人の住む団地はモデルになった愛知県豊田市の保見団地で実際に撮影された。
成島監督は次作「銀河鉄道の父」(5月公開予定)を撮り上げている。
写真は「リアルな現実と重なっている」と話す成島出監督=大阪市内

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