「耳をすませば」
2022年10月14日

もともとは1989年に発表された少女漫画(作・柊あおい)なのだが、多くの人は、スタジオ・シブリの同名アニメ映画(1995年)で、そのタイトルを知っているだろう。私もその1人。それも、ジブリ作品のなかでは、「千と千尋の神隠し」と並んで、好きな作品だ。
遠い昔の「青春」を思い出すのはもちろんのこと。アニメの劇中に登場する「架空の物語」が展開するのだが、そのパートの美術監督をしている井上直久とは、〝関わり〟があって、それでいっそう興味があったからだ。彼は高校の先輩で後にその高校の美術教師になった。アニメに登場するのは、生まれ育った故郷(大阪)をテーマに、今も「イバラードの世界」を描き続けている。しかし、接点はそれではなく、まったく別の線だった。ワイフワークとして、「かつて宝塚歌劇団にいた男子研究生(俳優)」を取材していくなかで、彼の叔父がその人だと判明。その消息を探すために、関西の百貨店で開かれていた個展に〝アポなし〟で訪ねて、それが判明したのだった。ちなみに、彼の祖父は、「赤玉ポートワイン」の丸髷をゆった女性のポスターを手掛けて井上木它(もくだ)というのも豆知識
さて本題、実写版「耳をすませば」の感想を。ベースになっているのは、アニメ版。それから10年後の1998年、児童書の編集者になった雫(清野菜名)とイタリアでチェロ奏者して活動する聖司(松坂桃李)との恋のなりゆきが描かれていく。バックに流れるの「翼をください」。タイトルロールでは杏が歌っているが、私たち世代ではフィークデュオの「赤い鳥」の歌声を思い出して、それだけでタイムスリップできるというもの。
また、雫が勤める出版社での上司との関係も、〝その時代〟を巧みに描いている。いまでは、完全にパワハラなのだが、それもその昔が当たり前のこと。さらに、実はその上司が言葉はきついが、根が人情家というあたりも古き良き時代?
そして、案外「新鮮」に思えたのは、最近のラブストーリーには、どちらかに重荷があり、それを克服するといったものが多いのだが、これはストレートなほどの展開。イタリアを訪れた雫が見た現実は…。私などは、これの古いが「木綿のハンカチーフ」の歌詞、メロディーを思い出した。
メリハリのある濃いラブストーリーものが多いなか、水彩画のようなさわやかな「感動」を生む作品だ。
【映画タイトル】 『耳をすませば』
【コピーライト】 ©︎柊あおい/集英社
©︎2022『耳をすませば』製作委員会
【公開表記】 10.14 ROADSHOW
【配給】 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松竹
映画『耳をすませば』公式サイト|大ヒット上映中! (shochiku.co.jp)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA