「裸のムラ」
2022年10/14~京都シネマ、10/15~第七藝術劇場、
順次 元町映画館にて公開。

「はりぼて」の五百旗頭幸男監督の作品だが、「はりぼて」に比べるとずっとコミカルで意表をつかれた。石川県知事選挙を軸に、石川県内で暮らすムスリムの一家や、バンライファー(車で移動しながら生活をする人)を捉えている。一見、何の関連もなさそうな3点を、パターナリズムというキーワードで括ったものだ。
バンライファー一家のエピソードでは、フリーで企業の広報をしている中川さんを取材した。劇中では「(このドキュメンタリーは)もしかしたら中川さんの思う映像になってないかもしれないですよ」とはっきり。監督はドキュメンタリーの中で、どんな風に自分を出すべきか計算しているし、話術も持っている。ドキュメンタリーに許される範囲内の演出を しているがクセが強くて、東海テレビの土方宏史監督や、世代は違うがマイケル・ムーア監督の手法と似ている。大人から子供まで、誰に対しても「ここまで言うかなあ」というほどズケズケものを言うので、最初は面食らう。それでも、“7期27年勤めた長期政権に、問題は無かったのか”と、谷本知事に向けた彼の質問が、的を射ていた。
ムスリム一家のエピソードでは、日本人と結婚したイスラム教徒の女性ヒクマさんに取材している。インドネシアと日本の文化的なギャップやムスリムへの警戒心。映像から、形にならない空気が伝わって来た。
時代はコロナ。総理大臣の職を辞する時の安倍晋三氏のテレビ映像も出て来る。五百旗頭監督は意識していないのだろうが、旧統一教会と自由民主党との関連が、嫌な事件を通じて表に出て来たことや、日本政治の先行きのことなど、あの日から今日までのショッキングな道のりが頭の中を駆け巡った。映画後半には、新知事に各社が手をあげるシーンがあるが、監督は後回しにされてしまう。油断してると質問の機会など簡単に取りあげられてしまうのだろう。だからこそ忖度の空気そのものを打破したいと五百旗頭監督は思っているらしい。もがいている監督自身の気持ちが描き出された面白いドキュメンタリー映画だ。
2022年/日本/118分
©石川テレビ放送

裸のムラ : 作品情報 – 映画.com

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