ドキュメンタリー映画「ポーランドに行った子どもたち」
2022年9月22日から大阪のシネ・ヌーヴォで公開

韓国の女優出身のチュ・サンミ監督(49)が長編第一作で撮ったドキュメンタリー映画「ポーランドに行った子どもたち」(太秦配給)が22日から大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開される。サンミ監督が脱北経験者の大学生、イ・ソンさんとポーランドに同行し、朝鮮戦争時代に戦争孤児として北朝鮮から同国に渡った子どもたちの秘話を巡って探索する作品。「分断孤児と戦争孤児の繋がりに傷の連帯を感じてもらえれば…」とサンミ監督は訴えている。
朝鮮戦争(1950~53年)で多くの死者が出て戦災孤児を生んだ。当時北朝鮮が戦争孤児たちをポーランドに送ったという話はあまり知られていない。「この話を聞いて劇映画にしたいと考え詳しい話を聞くため映画に出演する予定のイ・ソンさんを同行しポーランドを訪れた。当時受け入れてくれたポーランドの元教師の人々が親身になって世話をしてくれたエピソードが感動的で、まずドキュメンタリー映画を作りこの事実を知ってほしいと思った」
サンミ監督は女優時代、ハン・ソッキュ、チョン・ドヨンらと共演する人気者だったが、結婚、出産で休業し従来から希望していた作り手になるため中央大学大学院映画制作科に入り演出課程で学び、短編映画を経て今回が初長編になる。「朝鮮戦争の孤児は分断孤児であり、当時の彼らは近年の脱北者の様相にも繋がる。現代はウクライナ侵攻が起こり、同時代の世界市民としてこの映画を見てもらえるとうれしい」
朝鮮戦争時、1000人以上の北朝鮮の孤児がポーランドに送られた。「現地の元教師の方たちが、イ・ソンさんが北朝鮮から来たということで、昔の子どもたちとイメージを重ね、涙をぬぐわれた。近くの海に行き、イ・ソンさんが今も北朝鮮にいる家族のことを思い実弟の名前を叫んだ。彼女の心は彷徨していた」
映画は韓国のサンミ監督と脱北者イ・ソンさんの2人旅で「私が彼女に北朝鮮の話や途中中国での出来事などを聞いて、話したくないと怒ったこともあったが時間の経過とともに気持ちが通じ合い、何よりも昔の孤児たちの面倒を親代わりで見てくれたポーランドの元教師の人たちに、一緒に感謝の気持ちを伝えられたことがよかった。彼らは第二次世界大戦で過酷な戦争を体験しており、戦争孤児に深い理解があった」。
サンミ監督は、日本の是枝裕和監督、ベルギーのダルデンヌ兄弟監督のファンという。次回作は劇映画かドラマで同じ話を撮る予定で、当時ポーランドに行き再び北朝鮮に戻った昔の子どもたちのその後の話も知りたいと思う。
写真は「ポーランドに行った子どもたち」のチュ・サンミ監督(右)とイ・ソンさん(C)2016. The Children Gone To Poland.

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