「ロッキーVSドラゴ」
2022年8月19日公開
シルバスター・スタローンの「ロッキー」シリーズはすべて観ていて、第1作(1976年)に次いで、記憶に残っているのが「ロッキー4/炎の友情」(1985年)。東西冷戦のなかで、ソ連の選手と戦いという発想がおもしろかった。ちなみに、その4年後の1989年にソ連は崩壊、アントニオ猪木が率いる新日本プロレスが、ソ連のアマチュアレスラーを「レッドブル軍団」としてリングにあげたのが話題になったが、まさに先取りの発想だった。それに、ドルフ・ラングレンが演じたドラゴの〝人間離れ〟した存在はすごくて、(結末は想像できるものの)ロッキー危うし!と思ったものだ。
その作品が、「ロッキーVSドラゴ」として、生まれ変わった。コロナ禍のなか、スタローンが同作を見直し、「人間ドラマ」を色濃くした作品になった。とはいっても、「ロッキー4」はずいぶん昔に観たので、その違いは正直言ってわからない。ネット検索をしたところ、「アポロがドラゴ戦をする気持ちをロッキーに話す」「エイドリアン(ロッキーの妻)がそんなアポロを気遣う」場面などが新たに加えられたそう。反対にカットされたのは、「お手伝いロボット」が登場する全シーン。これはうっすらと覚えているが、当時としては最先端?のしゃべるロボットが、「緊張」したドラマの「緩和」になっていた。さすが、いま見ると存在に無理があるし、人間ドラマとしては必要がないとすべて削除されたという。
そんな比較はともかく、理屈抜きに楽しめる娯楽映画としてやっぱりよくできている。一番、感じたのは、国策によって戦うことを使命とするドラゴが、この作品では人間性を持つようになっていく変化がわかるし、それによって戦い=ボクシングが、ただの殴り合いから、かすかな友情の芽生えといった意味も感じることができる。
一方、「ロッキー4」を観た時には、疑うことなくアメリカ頑張れ!と思っていたのが、ソ連に敵愾心を持つあまり、ある意味でバカにしている驕りを改めて感じた。例えば、アポロとドルゴのラスベガスでの一戦。ゴング前のジェームズ・ブラウンまで登場してのド派手なパフォーマンスは、楽しいけれど、やりすぎの感も。そして、結末はわかってはいながらのボクシングシーンは、CGを使わず生身の戦いで、今回も手に汗をにぎった。
余談だが、ドルフ・ラングレンはこの後、数多くのアクション映画に主演するスターに。ドルゴの妻を演じたブリジット・ニールセンはスタローンと結婚(後に離婚)して話題になったが…。そして、スタローンはその後も、性格俳優にはならずにアクションにこだわる俳優人生を送っている。そんなことも考えながら、1時間34分(ほどのいい上映時間)を楽しんだ。
ロッキーVSドラゴ ROCKY IV | テアトルシネマグループ (ttcg.jp)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA