「DADDY LONG LEGS 足ながおじさんより」
2022年8月14日~17日 シアター1010
8月19日~22日 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
8月24日~31日 シアタクリエ

英語タイトルはちょっと言いにくいが 多くの人が知っている「足ながおじさん」の物語。しかし、どんなストーリー?と聞かれたら、これまでは最後まで言えたかどうか。というのも、この作品(2012年の初演)を観るまでは、映画「あしながおじさん」(1955年)のイメージが強かったからだ。フレッド・アステア、レスリー・キャロンが演じる華麗でシャレたミュージカル仕立てになっていて、2人の年齢差もあって、「優しいおじさん」といったイメージが強かった。また、この原作にインスパイアされた邦画には「冬の華」(1978年)もある。当時の東映作品らしく任侠もののテイストもあり、高倉健が演じる出所した主人公が、池上季実子が演じる義理のある人物の娘を支援するという設定。ここでも「優しいおじさん」だった。
ところが、このミュージカルは年齢の差も近く、登場人物もジャーヴィス役の井上芳雄、ジルーシャ役の上白石萌音の2人だけで、「いい話」から、より「ラブストーリー」に感じた。そして、2つの別の物語が頭をよぎった。原作が発表された時系列からして、それぞれがインスパイアされたというわけではなく、その根底に、「感動するドラマ」の要素があるのだと改めて感じたという意味。
1つはストレイト・プレイの「ピグマリオン」からミュージカル「マイ・フェア・レディ」、映画「プリティ・ガール」に通じる、女性の束縛からの解放、自立。ジャルーシャは文筆家になるための援助をしてくれている「足ながおじさん」には多大な感謝はしているものの、いつかは完全な自立を目指している。その葛藤が、おじさんへの手紙やジャーヴィスへの反抗?といった形で表れている。
もう1つは、「シラノ・ド・ベルジュラック」。自分の身分を隠して愛を貫き、相手にいつそのことを告白するか…。その葛藤が演技のしどころであり、観客にとっては、その瞬間に2人がどんな表情、反応をするのかが大きな見どころ。今回のその瞬間、まったくそんなことを想像していないジャルーシャが背を向けている時に、告白するジャーヴィス。運命の一瞬というわけではなく、さりげないやりとりがロマンチックなラストへと繋がっていくのだ。
シアタークリエ ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』 (tohostage.com)

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