「ミス・サイゴン」
2022年9月14日、大阪・梅田芸術劇場メインホールで観劇
2022年11月まで巡演

6年ぶりの「ミス・サイゴン」を観た。ロンドンや東京、大阪でいろいろな「バージョン」を観ているが、久しぶりということと新しいキャスト(後述)だったこともあって、新作のような新鮮な気持ちで楽しめた。この作品との最初の〝出会い〟は1989年のロンドン・ウエストサイドのドルリーリーン劇場。話題作は押さえておかないと、というのはもちろん、ダンサー役にタカラジェンヌが出演していたことも後押しをした。どういうわけか、日本では〝本場〟で活躍していることは、あまり報道されていなかったので、現地でコンタクトをとって彼女に取材できたのもいい思い出だ。
その後、日本では1992年の初演を。自分にとって、同じ東宝ミュージカルの「レ・ミゼラブル」に比べて観劇回数が少ないのは、〝劇場を選ぶ〟作品だったことが大きい。アメリカ軍がベトナムから撤退するシーンで、なんと実物大のヘリコプターが舞台上空から降りてくるのだ。そのために、帝国劇場は大改装。開場を控えていた福岡の博多座は、それが可能になるのを見込んで建設したほど。ということで、大阪の梅田芸術劇場メインホールでは長い間、観る機会がなかったというわけ。それが、2014年からの新しいバージョンでは、ヘリコプターは映像で登場するようになり、それら以外の劇場でも上演できることになった。
さて、観劇した9月14日午後6時の回の主要キャストは、エンジニア・東山義久、キム・高畑充希、クリス・小野田龍之介、ジョン・上原理生、エレン・仙名彩世ほか。いずれも、この役を演じるのを初めて観た。高畑は「ピーターパン」を演じるなどミュージカルでも活躍をしているが、どちらかと言うと映像の人。難易度の高い歌を見事にクリアしているが、それよりも感じたのは、やはり演技力。なかでも、恋人の結婚相手・エレンと対峙するシーンでは、リアルな訴え、怒りの感情を表現した。そして、エンジニアは市村正親の持ち役というイメージが強いが、それを東山が。どうしても比べてしまうが、市村がゲスで小粋なエンジニアとすれば、こちらはパワフルでやんちゃな感じ(少々、圧が強すぎ?)。彼は「宝塚BOYS」にも出演していて、素顔は関西弁のひょうきんさも持ち合わせている。これは勝手な解釈だが、「アメリカンドリーム」を歌って、踊っているところで、髪をかき分け、前髪をフゥ~と吹くシーン。これは上方漫才師、
海原はるか・かなたのギャグなのかも?!
一般的に、この物語の基になったのは、プッチーニのオペラ「蝶々夫人」と言われている。ただ、ピエール・ロテの「お菊さん」という説もああるが、悲しい結末は「蝶々夫人」をほうふつさせるのは確か。「蝶々夫人」「ミス・サイゴン」の両方に言えるのだが、演劇としてはドラマチックなのは確かだが、ほかに「決着」はなかったのかと、毎回思うのだった。
ミュージカル『ミス・サイゴン』 (tohostage.com)

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