「イントロダクション」「あなたの顔の前に」*

韓国の国際派、ホン・サンス監督(61)の新作2作が6月24日からテアトル梅田で同時公開される。一昨年の前作「逃げた女」がベルリン国際映画祭監督賞を獲得。昨年同脚本賞を受賞した「イントロダクション」(ミモザフィルムズ配給)と、同年カンヌ国際映画祭に出品された「あなたの顔の前に」(同)。奔放自在なサンス映画の魅力が堪能できる。
韓国の異端派といわれるサンスの作品は、大体街にくすぶる若者がうじうじ生きる姿を描いて独壇場。映画の仕事に関わっている登場人物が多く、ほとんどがうまくいっておらず不満を抱えており酒でそれをまぎらせぼやいている。主人公は女性が多いが、新作25作目「イントロダクション」のそれは医者の息子の青年(シン・ソクホ)で、親の跡を継ぐでもなく売れない俳優をやっている。
恋人(パク・ミソ)がいて、彼女がドイツに留学し、俳優を辞めようと決めるのはいいが、その先が分からない。俳優を辞めるのは「演技でキスシーンをするのは恋人を裏切ることになるから」が理由。酒席で老俳優から「君は甘い!」と一喝されるのは仕方がない。モノクロ映像で、サンスのミューズ、女優のキム・ミニが共演している。
サンス26作目「あなたの顔の前に」は1980年代にミュージカルスターとして活躍し、40年のキャリアを持つ韓国の名女優、イ・へヨン(59)と初めて組んだ女性映画。長くアメリカ暮らしをしていた元女優のサンオク(ヘヨン)が母国に帰り、妹(チョ・ユニ)の家に戻るところからドラマは始まる。妹やその家族との再会、懐かしい街を歩き、中年の映画監督(クォン・へヒョ)に請われて食事するなどしながら、久しぶりにのんびりした時間が過ぎていく。
監督に「映画に出てほしい」と誘われるが、彼女は「私にそんな時間がない」と答える。サンオクは何故故郷に帰って来たのか。彼女は子ども時代のことや、映画の仕事の過去の出来事などを思い出しながら、しばし心の旅を続ける。サンス映画にドラマ的な抑揚は少ないが、今回はヒロインと演じるヘヨンの足跡が重なってスリリングで、彼女の佇まいが美しい。今作ではキム・ミニが裏方のプロダクション・マネージャーを務めている。カラー作品。
サンス映画にはこれまでフランスのイザベル・ユペールや日本の加瀬亮らが参加しており世界の俳優に人気がある。サンスは次回作でもへヨンと組んでいる。
ホン・サンス監督作品『イントロダクション』『あなたの顔の前に』オフィシャルサイト|6/24(金)同時公開 (mimosafilms.com)
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