映画「冬薔薇(ふゆそうび)」阪本順治監督に聞く

大阪府堺市出身の阪本順治監督(63)の新作「冬薔薇(ふゆそうび)」(キノフィルムズ配給)が6月3日から大阪ステーションシティシネマほかで公開される。不祥事で自粛していた伊藤健太郎(24)の俳優復帰第一作。「今まで見せたことがなかった彼の裏面を主人公の青年に重ねて描いた。それはうじうじ焦りながら過ぎた時間かもしれない」という阪本監督に作品の狙いなどを聞いた。
デビュー作「どついたるねん」(1989年)で赤井英和、映画賞を総なめした「顔」(2000年)で藤山直美を主演に起用し、それぞれ高い評価を集めた。「『大鹿村騒動記』の原田芳雄さん、『一度も撃ってません』の石橋蓮司さんもそうで、俳優が先にあって、あて書きの脚本を作るのが基本。新作は不祥事を起こし自粛していた伊藤くんの仕事復帰第一作で、事前に彼と一対一で話し合い、そこから浮かんだアイデアも入れてオリジナルなドラマを作った」
25歳になる主人公の淳(伊藤)は、海運業を営みガット船(土砂や砂利を運ぶ)の船長をする父(小林薫)と事務所を切り盛りする母(余貴美子)と暮らしている。兄貴が事故で亡くなりその後親子関係がうまくいっておらず、淳は専門学校に通いながら、街の不良グループと付き合い不器用に生きている。「父親は負い目があるのか息子に何も言わない。妻はそれにいらいらしている。そこからどう切り抜けるか。伊藤くんには『何も芝居はするな』とだけ言って、その行動を見守った」
ほかに父の船の機関長に石橋蓮司、航海士に伊武雅刀、母の弟に眞木蔵人、不良仲間に永山絢斗、毎熊克哉、河合優実らが共演。「蓮司さんは僕の映画のマスコット(常連)で、彼と小林さん、余さんらベテランに対して伊藤くんがどう向き合うかも一つの試練にしたかった。彼が撮影中苦悶しながら演じていたのは容易に分かったが、それをクリアしたかどうかは彼自身にしか分からない。完成した作品を見て『やべえ(すごい仕事ができた』と言っていたので安心した」
主人公の「淳」は阪本監督の「順」にも重なっている。「コロナ禍で仕事ができなかったとき、うじうじ焦っていた。そんなある日酔ったまま花屋さんに行き薔薇の花を買った。翌日、その薔薇がすごく哀切に見えて、次の映画のタイトルにしようと思った。映画を撮るたびに、また一つ恥をさらしたと思う。見た人がラストシーンで『うん』とうなずいてくれたらうれしい」次回作は京都で時代劇を撮るという。
映画『冬薔薇(ふゆそうび)』公式サイト (fuyusoubi.jp)
https://www.fuyusoubi.jp/

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