「流転の王妃」
「田中絹代―女優として、監督として」*
2022年5月14日~27日までシネ・ヌーヴォ
田中絹代といえば、「愛染かつら」「西鶴一代女」「流れる」「楢山節考」「サンダカン八番娼館 望郷」といった作品での女優としての活動がよく知られているが、実は監督として6本の映画を手掛けている。それについては、フリーアナウンサーの津田なおみさんが「映画監督・田中絹代」(神戸新聞総合出版センター)という著書で詳しく紹介している。私にとって、そのなかで最も興味があるのが「流転の王妃」(1960年)。ラストエンペラーこと満州国皇帝・溥儀の弟・溥傑と結婚した日本人女性の愛新覚羅浩の生涯を、京マチ子が演じている。
映画では娘が1人だが、実際は2人などフィクションを交えているものの、歴史に運命に翻弄された人物を描いていて、「華やかな衣裳をまとったヒロイン」のイメージではなく娯楽映画というよりも、シリアスなドラマ。政略結婚ながら溥傑との愛情あふれる生活を送っていた浩が、1945年のソ連の対日戦開始によって苦難の日々をおくる姿が描かれる。それだけではなく、詳しくは描かれていないものの、冒頭には長女と恋人による「天城山心中事件」も登場するハードな内容は意外だった。
溥傑(映画では溥哲)に船越英二、祖母役に東山千栄子、母親役に沢村貞子ら、今は亡き生活感のある俳優がそろっていて、それだけでも観る価値はある。
5月14日(土)より、シネ・ヌーヴォにて「田中絹代–––女優として、監督として」が開催。監督作・出演作を一挙に上映。 (paperc.info)

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