3日は南座で「三月花形歌舞伎」を観劇。歌舞伎界をこれから背負うだろう若手役者5人が昼夜公演に役替わりで上演。「皿屋敷」といえば、お菊が「一枚、二枚」と皿を数える怖い場面を思い浮かべるけれど、あれは怪談話「播州皿屋敷」(それをベースにした落語「お菊の皿」もある)。こちら「番町皿屋敷」は、愛しい旗本の播磨の縁談に気をもんで。あえて皿を割るお菊という二人の悲恋を描くもの。播磨は、「間違って皿を割ったのなら、許せるが、自分の気持ちを疑って故意に割ったことは許せない」とお菊の命を奪う展開。細やかな心情の移り変わりを演じているが…。やはり、女性に対する視点や「命を懸ける」という感覚が現代とはかけ離れたもの。胸を打つというよりも、「新歌舞伎」という「古典」に挑む若手たちの取り組みを見る価値がある。

 もう1本の「芋掘長者」は恋焦がれた女性に「舞の名手」と偽ってやってきた男の物語。家系を継ぎ「坂東流」宗家である坂東已之助が、踊りの苦手なその男に扮し、最初は下手に、そして芋掘りの舞をコミカルに踊るのがみもの。「下手に踊る」のはかえって難しいのでは?

 どうしても、梨園の名門に生まれた役者たちに目が行きがちだが、他の若手たちも精進している。「番町皿屋敷」で播磨をなんとか引き留めようとする権次を演じた中村蝶一郎の好演が印象に残った。

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