(3月6日、神戸三宮シアターエート

紅壱子さんの一人芝居。劇作家の菱田信也さんが彼女のために書いた作品が26年目にして上演。実在の人物をモデルに、戦後に生き抜いた6人の女性を演じ分けるアンソロジー。それぞれのエピソードの前に、今回のために撮影された古びたフィルム風(微妙に揺れ、傷がついた映像)にニュース報道風のナレーション(南条好輝)が入り、戦前前後の雰囲気を醸し出す凝った構成。

エロスを前面に打ち出したカストリ雑誌=発刊3号(酒3合)で潰れるという意味から付けられた=の記者が、その世界でたくましく時代を生きてきた女性を取材するという形式で展開していく。もともとは「贋作タクシードライバ」という作品で知られる劇団「男と女」を結成するなど小劇場で活動し、いまはシリアスな芝居から喜劇、テレビ「雲霧仁左衛門」のお松などさまざまな役柄を巧みに演じる幅広い芸域。私が、かつて存在した「宝塚新芸座」の〝復活公演〟を企画し、失礼を承知で「演技指導・監修」をノーギャラでお願いしたところ引き受けたいただいたことも。「何度か稽古を見てもらう」という軽い気持ちだったのが、演出をぜんぶ引きくてもらい、舞台装置も話をつけて大型トラックで運んできてもらって大感激した経験があります。

そんな「男前」の紅さんが。関西弁を駆使した娼婦やはんなりとした京都弁での元芸妓など、幅広い人物を瞬時に切り替えるのはさすが。僕的には、「ミス○○」が乱立した時代に、「ミス逆立ちコンテスト」で優勝を逃した地方の農家の嫁は秀逸。おかしさよりも哀しくてぐっときました。全国区ではちょっと危ない「紅萬子」と芸名を使い続けてきた関西の舞台人の気概が伝わってきました。

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