新歌舞伎座「サザエさん」(2月25日に観劇)

最近はあまり見ていないけれど、♪お魚くわえたドラ猫、追っかけて~ というメロディは当たり前のように歌えるし、一家の名前も全部言えます。そんな「サザエさん」の〝実物版〟。藤原紀香をはじめ、無理にキャラクターに寄せてるわけでもないのに、イメージぴったり。酒井敏也が猫のタマを演じているのも違和感はなし。

マンガやアニメと違うのは「10年後の磯野家」という設定で、カツオが大学を卒業したフリーター、ワカメはデザイナー志望でパリ留学、タラちゃんは高校生。それぞれの進路に悩み、それを親は姉が心配しながら見守る物語。飲食店を経営したいというカツオが不動産を探したり、ワカメが「別の仕事」を斡旋されたり、ちょっと現実的ではない展開もあるが、善人ばかりが織りなすドラマにほっこりとした気分に。

ところが、話の落としどころは、現代ではけっこう斬新。いい意味で〝ぬるま湯〟のように温かい家庭を離れて一人暮らしを始めるというカツオ、ワカメ。さらに義理の両親と同居しているマスオまで、「家を建てて別に暮らす」夢を語りだす。こうなると、みんなが爽やかに別々の暮らしを始める…というのが、たいていのドラマの決着なのだが、さすが「サザエさん」!タラちゃんが「なぜ、一緒に暮らすのがいけないの!」とダダ?をこねる。そこで、私はぐっと身を乗り出し、心の中で「そのとおり」と。一人暮らしをするのが「独立精神」の象徴のように思われている昨今。家族がいて、そこに同居できる環境であれば、いいではないか。どうせ、いつかは「別れる時」が来るのだから。絵にかいたようなホームドラマでありながら、現代でありがちな「予定調和」に終わっていないのがいい。

カーテンコールでは、「こんな不安定ななか、いつ公演中止なるかわかないので、毎日が千秋楽の気持ちで演じています」と藤原が決意を語っていたが…。観劇したのは25日、その後に関係者がコロナ陽性となったため26日、大阪千秋楽の27日が中止になったのは残念。!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA