「水平線」
  
2024年3月1日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開
2023年12月8日(金)~12月14日(木)フォーラム福島にて一週間限定 福島先行上映

福島県の漁港で、1日1日を静かに過ごしている人たちに、〈隠されたドラマ〉がある。この映画は、それをけっして声高にドラマチックに綴るのではなく、淡々と綴ることでかえって、人々のうちに秘めた心情がリアルに伝わってくる。例えば、ピエール瀧が演じる東日本大震災で妻を失った主人公。それから10数年が経ったいま、毎日を悲しみでうちひしがれて暮らしている…といったステレオタイプの人物像ではなく、仕事が終わればカラオケスナックに行ってホステスをからかい、熱唱することもある。また、一緒に暮らす真吾の娘・奈生も、昼食を一緒に食べる会社の先輩の「お金貸して?」という言葉を疑うことなく手をさしのべる。そういった普通の心情、暮らしをしている描写があるからこそ、この作品で投げ掛かける〈物語〉の深さ、それに対して一面的ではない解決する難しさがいっそう伝わってくる。
いまは海への散骨を生業としている真吾のもとへ、殺人犯の骨が持ち込まれることで、〈物語〉が始まる。最初のうちは彼にとって、いつもの仕事の1つだとも思っていたが、ジャーナリストが現れ、「多くの人が眠るこの海に殺人犯の骨を撒くのか」と鋭く問いかける。ここに描かれるジャーナリスト像は、どちらかというと前半部分で書いたような真吾や娘、漁村の人々をとらえたヒューマンな側面ではなく、「正義とはなにか?」を問いかける、ある意味で使命感を持つシンボルとして捉えられている。しかし、その使命感がSNSまで駆使するまでになり、世間の厳しい目、そして風評の怖さへと繋がっていく。遠慮なく真吾にカメラを向ける姿勢など、スキャンダリズムとすれすれのあやうい正義感?がある。津波にさらわれて行方不明のままの真吾の妻=奈生の母。通り魔事件の加害者。2人の「遺骨」をキーワードに、普通に生きようとする人たちが等身大で描かれている。
〈ストーリー〉 震災で妻を失った井口真吾(ピエール瀧)は福島の港町で娘の奈生(栗林藍希)と二人暮らし。生活困窮者や高齢者を相手に格安で請け負う散骨業を営んでいる。一方、水産加工場で働く奈生は遺骨の見つからない母の死を未だ消化できないでいた。そんな日々の中、松山(遊屋慎太郎)が亡くなった兄の散骨の手続きにやってくる。ある日、ジャーナリストの江田(足立智充)が真吾の元を訪れ、先日持ち込まれた遺骨が世間を一時 震撼させた殺人犯のものであると告げる。震災で多くの人が眠るこの海に殺人犯の骨を撒くのかと言う江田に対し相手にしない真吾。江田の執拗な取材は続くなか、真吾のとった行動は…。
〈キャスト〉ピエール瀧 栗林藍希 足立智充 内田慈 押田岳 円井わん 高橋良輔 清水優 遊屋慎太郎 大方斐紗子 大堀こういち 渡辺哲ほか。
〈スタッフ〉監督:小林且弥 脚本:齋藤孝|音楽:海田庄吾
エグゼクティブプロデューサー:坂岡功士
プロデューサー:太田あや 齋藤寛朗(KAZUMO)
撮影:渡邉寿岳 |録音:加唐学 小山海太|整音:反町憲人|音響効果:松浦大樹
美術:ホ・ジニ|ヘアメイク:森川丈二|衣装:藤原わこ|助監督:伊藤良一
キャスティング:大川憧子|制作担当:小玉直人
撮影協力:福島テレビ 観音丸(草野直雅) 共栄丸(高橋正広) サンエイ海苔 磐梯マリーン 相双緑化土木 槇野産業
音楽制作協力:東映音楽出版|ポスプロ:日活スタジオセンター
企画・製作:STUDIO NAYURA|制作協力:G-STAR.PRO SHAIKER
配給・宣伝:マジックアワー
2023年/119min/カラー/シネマスコープ/5,1ch

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