「ネクスト・ゴール・ウィンズ」
2024年2月26日公開
ディズニーから、この映画の試写会に招待されて観た。
サッカージアカップのグループリーグ第2戦、(2024年1月19日)、FIFAランキング17位の日本代表が63位のイラクに敗れる〝事件〟があった。このように、スポーツの世界にはときどき「ドラマ以上のドラマ」が起こることがある。この映画もサッカーで起こった本当にあった出来事を描いた物語。
負けてばかりいる集団が勝利を重ねる。その競技が盛んではない国のグループが奇跡を起こす。そういった映画がこれまでにも数多く作られてきた。前者には、少年野球を描いた「がんばれベアーズ」(1976年)や大リーグを題材にした「メジャーリーグ」(1989年)などを思い出す。
この映画のそれらと大きく違うのは、実話をベースにしていること。10 年以上にわたって、FIFAランキング最下位で、〝世界最弱〟と言われた米領サモア・サッカー代表チームが 2014年ワー ルドカップブラジル大会予選で初の勝利を勝ち取った実話を基にしている。それを知っていると、出来過ぎ?とも思える展開にも説得力がある。
例えば、ダメ・チームを立て直すコーチのキャラクター。最初はイヤイヤ引きうけたのが、だんだんとのめり込んでいくというのは、正直よくあるパターンなのだが、それがちょっと違う。相手に点を取られ続けた前半が終わってのハーフタイム。そこで、コーチが選手たちや試合を冷静に分析する、ところなのに、ふがキレてしまい、なんと選手をほっておいて「辞める」と言い出すのだ。理屈などを超越したリアルな人間味を感じる。
さらに、特筆したいのは女性ホルモンを投与している選手が登場すること。さすが、これはドラマを盛り上げるためだ、と思っていたところ、エンディングにモデルになった人物が登場してびっくり。日本では、まだまだハードルが高い設定を、2014年当時に、現地では軽々とクリアしていたのには感心した。〝絵に描いたようなサクセス・ストーリー〟で結末がわかっていながら、やはりゲームのシーンははらはらどきどき。意識的に、「感動作」というほど声高には描いていなくて、それがほどよい娯楽作になっている。
〈ストーリー〉2001年のワールドカップ・オセアニア予選で米領サモアチームは対オーストラリア代表戦で0―31 という記録的惨敗を喫した。2014年の予選では長年の汚名を晴らす1ゴールを決めたいと願う人々。そこへ、選手としても指導者としても実力を十分兼ね備えたトーマス・ロンゲン(マイケル・ファスベンダー)が、米国サッカー協会から派遣されてきた。あまりにもカルチャーが違うチームに苛立ちを隠せないロンゲンだったが、 彼らが持っているひたむきさや優しさに触れるにつれ、いつしか心に負った傷が少しずつ癒やされていく。
監督:タイカ・ワイティティ『ジョジョ・ラビット』 出演:マイケル・ファスベンダー、オスカー・ナイトリー、カイマナ、エリザベス・モスほか 2023年/イギリス・アメリカ/Color/原題:NEXT GOAL WINS 公式サイト:www.searchlightpictures.jp/movies/nextgoalwins ©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.