THE COLOR PURPLE

「カラーパープル」
      2024年2月9日公開
 ワーナー・ブラザースの招きで、試写を観ることができた。この映画のベースになっているスティーブン・・スピルバーグ監督の「カラーパープル」(1985年)も公開当時に観ている。いわゆる文芸大作で、それまで娯楽色が濃い作品を作り続けていたスピルバーグが、「こういう映画も監督するのか」と驚いた。また、これが映画デビュー作だった主演のウーピー・ゴールドバーグはもちろん「初見」で、およそスターらしくない自然な演技にも感銘したのを覚えている。
 今回、試写を観た後に改めてそれを観たが、正直なところそれが良かったのかどうか…。頭の中で、元の映画をミュージカル版に「上書き」したような気分にもなったから。原作があるのだからストーリーが同じなのは当然だが、ある意味では、この映画は前回の映画版をトレース(細部などを手直し)したような感じもした。
 一般的には華やかなで明るいイメージがあるミュージカルだが、それだけではなく、シリアスなものも数多くあり、それらも高く評価されている。言うまでもなく、この映画は後者で、「ミュージカル」と呼ばれる映画や舞台のなかでも、その構成や仕組みが新鮮な気がした。というのも、音楽のベースに「ゴスペル」と「ジャズ」というアフリカ系アメリカ人のルーツにある音楽が、物語のなかで巧みに組み合わされているからだ。ハーポが経営し、ソフィアが歌い踊るジャズクラブのシーンは、いわゆる「劇中劇」でもあり、これは日常生活の苦労や悩みを忘れるような、にぎやかで派手な場面で、こんな強烈な色彩(カラー)を随所に登場させることで、「ミュージカル映画」としての醍醐味を味わえる効果を生み出している。 一方、ミュージカルは「語るように歌え」とも言われていて、それがさらにパワーアップしたのが、高まる気持ちで自然に歌へと代わっていく「ゴスペル」を意識した出演者たちの圧倒的な歌唱力。オープニングの少女時代のセリーとネティ姉妹の歌は、それから起こる悲惨な出来事を予想していないだけに、その輝きがかえって、観る側は複雑な心境で受け止めることになる。 
 ストーリー自体は、登場人物が複雑に絡み合っていて、正直ちょっと混乱することもあって、観ながら整理していくのが賢明。ドラマの根底にある父親の性暴力というのは、冒頭にネティが生んだ赤ん坊を父親が連れ去ることで「暗示」されているのだが。あまりにも衝撃的な事だけに、そこまで想像ができない観客も多いかもしれない。ただし、全体に流れる男女、夫婦の図式は程度の差こそあるものの、日本でも一時代前(現代も?)にあった現実。なかでも夫の暴君ぶりは「絵空事」とは思えず、そんななかで、「殴られたら殴り返す」ソフィアの行動は痛快!ただし、過酷な刑が待っているのも現実。また、セリーが夫のヒゲをそるためにカミソリを研ぎ、首元に当てるシーンは、この物語を象徴するシーン(前回の映画でも印象的だった)。そして、ラストは離れ離れになっていた姉妹の再会へと続く流れは、まるで、1冊の文芸大作を読み終えたような達成感、満腹感があった。
<ストーリー> 父に疎んじられ、10 代にして望まぬ結婚をしたセリー。 夫のせいで最愛の妹と生き別れ、不遇な日々を送る中でもユーモアを忘れない彼女は、偶然にも人気歌手の世話をすることになる。 最初はセリーを軽んじていた彼女だったが、セリーの中にある不屈の精神とユーモアを認め、しだいに二人は絆を強めていくのだった。 セリーもまた、彼女によって初めて自分の価値に気づいていく。 そしてある出来事をきっかけに、セリーの未来は大きく動いていく。
製作:オプラ・ウィンフリー、スティーブン・スピルバーグ、スコット・サンダース、クインシー・ジョーンズ 監督:ブリッツ・バザウーレ 原作:アリス・ウォーカー 出演:ファンテイジア・バリーノ、タラジ・P・ヘンソン、ダニエル・ブルックス、コールマン・ドミンゴ、コーリー・ホーキンズ、H.E.R.、ハリー・ベイリー他 原題:Color Purple 配給:ワーナー・ブラザース映画 上映時間:141 分 © 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. 公式 HP:colorpurple.jp #映画カラーパープル
(C) 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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