2024年1月6日から大阪第七芸術劇場、同19日からアップリンク京都で公開

1990年代にサトウトシキ、佐野和宏、瀬々敬久ら監督と並んで「ピンク四天王」として注目を集めた佐藤寿保監督(64)。静岡県出身。東京工芸大学在学中から8ミリ自主映画を制作し、卒後1985年に向井寛主宰の獅子プロダクションに参加。滝田洋二郎監督などの助監督を務めた後、デビュー作「狂った触覚」をはじめ「αとβのフーガ」「視線上のアリア」「乱歩地獄/芋虫」「名前のない女たち」など60本を超える作品を発表。前作「眼球の夢」(2016年)以来久々に手がけた新作が「火だるま槐多よ」(渋谷プロサクション配給)で、初めてR—18(成人映画指定)を外れた一般映画である。
 村山槐多は大正の時代の日本の画家で、詩人、作家でもある。ガランス(深紅色)を多用した独特の生命力にあふれた絵画は二科展、日本美術院展などで入選し注目されたが、破滅的な放浪生活の末、流行性感冒で1919年に死去。佐藤監督はその代表作にあたる「尿する裸僧」の絵を10数年前の展覧会で見たのが映画化の大きな動機。「以来、槐多の伝記ではなく、彼の悪夢のような絵の力強さの原点を探るような作品を目指した。コロナ後の抑圧された今の時代、我々に何かを突きつけているような気がした。これを映画で伝えようと思った」
 映画は現代の都会の街角で若い女の薊(佐藤里穂)が「あなたは村山槐多を知っていますか?」と通行人にインタビューしているところから始まる。多くが知らないと答えるが、都会の音を収録している若い朔(遊屋慎太郎)が「知っている」と答える。「この2人が槐多の故郷を目指す中、途中で若い4人のパフォーマンスグループ(工藤景、涼田麗乃、八田拳、佐月絵美)と出会い一緒に槐多の生きた根城を訪ねて行く。それは神州の洞窟のような場所にあるのだが、そこが見どころのひとつ。天才で奇行が多く、仮面を被って死と立ち向かった槐多。捉えどころがないが、そんな生命力をスクリーンにたたきつけたかった」
 「22歳と凝縮した人生を生き、のたれ死んだ。槐多の舞踏に似た肉体表現を、若い俳優達に託し、スタッフのカメラマン・御木茂則さん、音楽・田所大輔さん、特殊造形/特殊メイクの松井祐一さん、土肥良成さんなど多くのスタッフに大きな力を借りた。脚本はコンビの夢野史郎さんで編集も前作でもお世話になった鵜飼邦彦さん。名優の佐野史郎さんも是非とお願いし快く引き受けてくださった」
 タイトルの由来は友人だった詩人の高村光太郎の詩「強くて哀しい火だるま槐多」から。なお東京の新宿K,s cinemaで12月23日から29日まで「火だるま槐多」公開記念で佐藤寿保監督の「血だるまヒサヤス もしくは美の男」という特集上映が行われる。デビュー作「狂った触覚」や昔のピンク映画など7作品が16ミリ作品などで上映される。
写真は「今の若い観客に問いかけをしたい」と話す佐藤寿保監督=大阪の第七芸術劇場

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