「シアター・キャンプ」

2023年10月6日よりシネ・リーブル梅田ほかにて全国公開

8月10日、ディズニーから招待された試写会で鑑賞。子供達のための演劇スクールの一夏を、モキュメンタリー(ドキュメンタリー仕立てのフィクション)形式で描いた作品である。舞台はニューヨークにあるシアター・キャンプ「アディロンド・アクト」。毎年、生徒の募集をかけるが、赤字続きでキャンプの存続自体が怪しくなってきている。追い打ちをかけるように、今年は校長のジョーンが倒れ、ジョーンの息子・トロイがピンチヒッターで校長に。トロイは全く畑違いの人間で、演劇のことを何も知らないことから、トラブルが発生する・・・。
ミュージカルの舞台が完成するまでの子供達の奮闘と、キャンプの資金集めがタイムレースで描かれる。ミュージカルについて描いているのだが、アメリカ人と文化について触れていところが面白い群像劇だ。監督、脚本、出演のモリー・ゴードンと共同監督のニック・リーバーマンも、シアター・キャンプの経験者。アメリカではこうしたキャンプが延々と運営され定着していると言う。経営は、生徒達からの授業料だけでなく、市民か団体からの寄付などで成り立っているので、当然お金集めのうまいキャンプとそうではないキャンプが出てくる。本作の劇中では、恵まれたキャンプと恵まれないキャンプの違いも出てきて、双方の競争心理も描かれる。
赤字であれ黒字であれ、キャンプで生徒達に演技やダンスなどを教える講師達にとっては真剣勝負の場であることに違いはない。講師はみんな、一流を目指す途上の演劇関係者で、彼らがワイワイ集まってくると、ミュージカル好きな子供達の熱量を吸収して、カオスとも言えるムードを作り出していく。子供の頃からこういうキャンプに参加していたら、ミュージカルは自然に身近なものになるだろうと思う。
演劇講師の1人、エイモス役で出演しているベン・プラットは、ブロードウェイミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」の主役で2017年にトニー賞ミュージカル主演男優賞を受賞した俳優だ。映画化もされた「ディア・エヴァン・ハンセン」で演じた傷つきやすい青年が、大きく成長して出て来たような役作りがいい。唄や衣装について教えるそのほかの講師達もひとクセありで、生徒の側にもセミ・プロが居たり、誰にも注目されなかった子にスポットライトが当たったり・・・。1人ひとりの個性を大切にする多様性をうたった、アメリカっぽい文化の匂いがする世界だ。

(2023年/アメリカ/95分)
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン
⒞2023 20 th Century Studios.All Rights Reserved.

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