「家族モドキ」
2023年7月26日~8月13日
東京・シアター・クリエ
8月18日~20日
大阪・サンケイホールブリーゼ
8月24日
愛知・刈谷市総合文化センターアイリス大ホール
山口祐一郎、保坂知寿、浦井健治、大塚千弘の4人だけによる芝居。脚本は大河ドラマ「篤姫」「江~姫たちの戦国~」などを手掛けたがける田渕久美子で、3年前に山口、保坂、浦井の3人芝居「オトコ・フタリ」に続く第2弾。演出も前作と同じ山田和也だが、といってドラマは続編ではなく、新たな設定による新たな家族の形を描いた作品。まるで〈ミステリー〉を観ているような錯覚にも陥るほど、すべてが謎を秘めた人物たち。〈ミステリー〉といっても、「殺人」などはなく、むしろ「誕生」が展開をにぎる出来事になっている。
下記のようなストーリーにはNG(観ての楽しみ)がいろいろあって、解説をしにくいのだが…。まず、順風満帆そうにみえる次郎だが仕事上でトラブルを抱えている。一方、突然に現れた渉と民子との関係性にも、〝再会〟した様子などから、いろいろな推測をすることができる、さらに、その渉の一回り年上の妻・園江は、渉と民子との仲の良さにジェラシーはなく、やさしく接する。そんな4人が「誕生」をきっかけに、家族のような(もどき)、心を繋いでいく様子が描かれている。
ときには、動揺をしたり激しくぶつかり合うこともあるが、あえてドラマチックにしないで、自然な言動、会話で綴られている。一般的にはミュージカル俳優のイメージが強いた山口、保坂だが、劇団四季時代を含めてストレートプレイ(セリフ劇)の経験も豊富。それだけに、つぶやくようなセリフも客席に明瞭に伝わってくるのはさすが。山口はダンディでありながら、どこかお茶目で憎めず、それでいて重要で肝心なある出来事には、しっかりと差配する人物像を。また、ご坂はさりげない会話のなかに抑揚、テンポを微妙に変えて、その時の心情を表現。(経緯は明かせないが)無表情でぬいぐるみを抱える様子がいじらしく、胸に迫る。一方、浦井は劇中で次郎に指摘されるように、若さゆえなのか「陰影が薄い」けれど、底抜けに人がいい青年を自然体で。大塚はちょっと勝気で父と対立するが、しだいに心を開いていく変化を表現した。
淡々と展開していくなかで、感情が沸き上がり感動する佳作。ただ、願わくば、会話のなかで人物像が明かされる、彼女が付き合っていた男性のエピソードが私にはちょっと平坦にも思えた。
〈ストーリー〉その日、日本史研究家であり 大学で教鞭を執っている高梨次郎(山口祐一郎)はそわそわと落ち着きがなかった。一人娘の民子(大塚千弘)が久しぶりに家に帰ってくることになっていたのだ。そこに、民子の大学時代の同級生である木下渉(浦井健治)が現れる。そんななか、帰ってきた民子に予期せぬ事実が発覚。混乱する次郎の前に、渉の妻・木下園江(保坂知寿)が現れる。

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