少女歌劇団ミモザーヌ 夏公演
「Summer Collection」
2023年8月5日、6日
東京・草月ホール
8月12日、13日
大阪・YES THEATER

宝塚歌劇団が109年前に初公演を行って以来、さまざまな少女歌劇団が誕生し、現在も宝塚、OSK日本歌劇団(101年目)などが活動をしている。一方、男子校の東海高校(名古屋)には部活動として、カヅラカタ歌劇団(名称はパロディーだが、真剣に宝塚公演をコピー)があって、文化祭公演などではチケット入手困難なほど人気がある。6年ほど前、人気ゲーム「サクラ大戦」とコラボしたOSK公演(京都・南座)で、このコンテンツを手掛けて広井王子氏と知り合った。そして、吉本興業がプロデュースして少女歌劇団を立ち上げる構想を知った。花に例えると、宝塚が「スミレ」、OSKが「サクラ」なら、この劇団は「ミモザ」をシンボルに設定、「少女歌劇団ミモザーヌ」と名付けられた。なによりも他と違うのは「20歳になったら卒団」するというルールで、正真正銘の「少女歌劇団」。アイドルグループと一線を画すため、「アイドル志向」の少女たちは入団できないとも。そうした経緯があり、第1期、2期生が汗を流すレッスン場を見学、才能がどのように開花するか、長いスパンで見続けたいと思った。ただ、その後に見舞われたコロナ禍によって、オンラインだけの公演、人数制限などが相次ぎ、なかには夢見ていたほど活動できないままに「卒団」した人もいた。
今回は人数制限やマスク着用の義務もなく、観客の声出し制限も解禁、ようやく〝本来の公演〟が可能になり、こちらも心置きなく観劇することができた。結論から言うと、彼女たちの成長がはっきりとわかる公演だった。親でも親戚でもないし(笑い)、一部の出演者と直接に会ったのも1度だけなので、身内的感覚(それはそれでいいのだが…)というより、蓄積してきた舞台への想いをストレートにぶつけられた衝撃といったほうがいいだろう。それはパフォーマンスからはっきりとわかる。いまの世代だけにリズム感のあるダンスはわかるとして、しなやかな動き、動作が必要なステージダンス。さらに言うと、和服で舞う「木遣りくずし」の所作も、洋舞のなかでのアクセントといった程度の奇をてらったものではない。彼女たちが習得するカリキュラムとして、歌やダンスはもちろんのことアクロバット、殺陣などもあり、華道でも和の心を学んでいるという。また、舞台人として大切な「体幹」の鍛錬もあり、遠回りとも思われそうな、こうした科目を数年にわたってやってきたことが花開こうとしているのだ。10代の身体的な成長に精神的成長が相まって、アマチュアの域を超えた魅せるパフォーマンスになっいるのだ。
それぞれが得意なことを自覚するようになったのも、大きな「成長のあかし」だろう。ある人は、年齢を超越したムードあふれる歌唱を聴かせるし、伸びやかな高音が出る人も。また、鮮やかなアクロバティックを披露する人や機転のきいたトークでなごませる人も。そうした個性、特徴が独立しているのではなく、ハーモニーを醸し出しているのは構成の妙。20数曲ある歌も、オリジナルからジャズ、昭和歌謡とバラエティーに富んでいる。そして、エンディングはいつものように、全員が制服姿で劇団歌「ミモザのように」を合唱。いい意味で発表会に来たような気分になり思わずウルウル。一緒に行った某演劇会社プロデューサーも隣で…。
帰りに2人で話したのは、「20歳を過ぎた」少女たちのこれから。この年代で「芸事の素養」をある程度まで習得した才能は生かしてほしいもの。アイドルでも歌劇団でもなく、新たな領域かもしれない。客席には男性ファンを多く見かけ、野太い掛け声も飛んでいた。そうした、どこかで観た光景にプラスアルファ。「才能の宝庫」として、いろいろなパフォーマンスに輩出できるシステムを確立してほしいと感じたのだった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA