ドキュメンタリー映画「ハマのドン」

5月6日から第七芸術劇場で公開

テレビ朝日「報道ステーション」のプロデュースなどを務めた松原文枝が監督を務めたドキュメンタリー映画「ハマのドン」(太秦配給)が5月6日から大阪の第七芸術劇場で公開される。2021年の横浜市長選で菅義偉首相に反旗を翻した地元のドン、藤木幸夫の闘いを記録した作品で「カジノ誘致阻止で市民と共闘した人間力を見てほしい」と松原監督は訴えている。

横浜市のカジノ・IR構想は早くから安部政権の景気対策としてあり地元の菅官房長官がその先頭に立っていた。19年、地元港湾事業者の元締め的存在でその政治力で「ハマのドン」といわれた藤木が「博打はだめだ」「カジノは許さない」とノロシを上げた。やがて菅が安部の後継を担い首相になっており、藤木は21年8月の横浜市長選で旧友ともいうべき国の最高権力者に闘いを挑むのである。

「藤木さんは古くから自民党員で、菅さんとは同志的つながりがあり、菅さんの師である地元の代議士、故小比木彦三郎さんとも親しかった。そんな人脈の藤木さんがいわば反旗を翻す形なのに驚くと同時に、すぐに取材でご本人に会ってそれを確かめて、彼の姿勢のバックボーンが何なのかを知りたいと思って取材を続行。結局、カジノ誘致賛成の前市長・林文子さん、そして菅陣営は小比木さんの3男・八郎さんを立て、藤木さんは新人の山中竹春さんを支持することで闘いは始まった」

藤木さんは港湾事業の関係で山口組の田岡一雄さんとも知己があるが、素顔は読書家で知識人。「永く港湾事業に取り組み、横浜山下埠頭の労働者と付き合ってきて、彼らの汗と血と涙が滲んだ歴史を考えると、ここでカジノをやらせることはできないと語気強く言う。加えて、カジノの背景にラスベガスの『世界のカジノ王』の名前があるのも気に触った。御年91歳の男気というべきか」

カジノ反対で国民投票を呼びかける市民団体が19万超の署名を集めた。「結果的に藤木さんは市民運動と共闘し、選挙の結果は反対派が大差で勝利。国の最高権力者と闘って勝つと予想した人はそんなにいなかったと思うが、菅首相が短命政権で終わる大きな要因になったのは間違いない。権力に刃向かい、返り血を浴びても道理を重んじる。藤木さんの人間力はすごいと思う」

藤木さんは現在93歳で元気という。ナレーションはリリー・フランキー。松原監督は1991年テレビ朝日入社。現在、同社ビジネス局イベント戦略担当部長。

写真は「市民が政治を変えられると考えてほしい」と話す松原文枝監督=大阪・十三の第七芸術劇場

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA