映画「銀河鉄道の父」
5月5日から全国ロードショーン

門井慶喜の同名直木賞小説を映画化した「銀河鉄道の父」(キノフィルムズ配給)が5月5日から全国でロードショー公開される。詩人の宮沢賢治の父親・政次郎に役所広司(67)、賢治に菅田将暉(30)という親子が繰り広げるヒューマンな家族の物語。「クスクス笑えるチャーミングな父親と、荒ぶる魂の息子の触れ合いと葛藤を2人の俳優に託し演じてもらった」という成島出監督(61)に話を聞いた。
成島監督は自主映画を撮った後、脚本家として役所広司主演の「大阪極道戦争 しのいだれ」でプロデビューし、奥田瑛二主演の「恋極道」などで力量を発揮。役所主演のコメディ「油断大敵」(2003年)で監督デビュー。「初めから役所さんと縁ができ、その後東映で戦争物『聯合艦隊司令長官山本五十六-太平洋戦争70年目の真実-』を経て、昨年の『ファミリア』、そして今回の『銀河鉄道の父』に繋がった」と振り返る。
「宮沢賢治は以前から興味があったが、人物像が多面化しており難しいところがあったが、門井さんの小説では父親のアングルから賢治が捉えられており面白く、役所さんにクスクス笑えるチャーミングな父親を演じてもらえば面白くなると思った。賢治はナイーブでピュア、荒ぶる魂を秘めた菅田さんしかいないと、2人のところへ原作本を持って出演依頼に行った。役所さんとは『油断大敵』の時に戻って、原点帰りにしようと思った」
政次郎は親馬鹿で、小学生の賢治が赤痢で入院した時「医者に任せられん」と病院に駆け込む。「明治、大正、昭和の初めが舞台で、あの時代に、自然児で奔放な賢治に対し、振り回されながらも、やりたいようにやらせた父親がすごい。賢治は稼業の質屋が嫌いだったが、稼業を継がないことも許し、農業学校に行ったり、人造宝石の仕事をしたり法華経の宗教には入ったりして内心困りながら怒った顔をしなかった。妹のトシ(森七菜)の願いで賢治が詩や物語を書き、それを見守った」
「賢治は無名のまま37歳で亡くなるが、政次郎と家族は彼の才能を伝えるために努力し、その名が世界に知られるようになった。コロナ禍やウクライナ侵攻の時代だから、家族の大事さを思うし、政次郎と賢治の家族の物語は普遍的な家族の物語、希望の物語だとつくづく思います」
賢治は岩手県花巻市で育つが、今大リーグの大谷翔平選手も花巻東高出身で同郷。「大谷選手と栗山英樹監督の師弟関係が、宮沢親子の絆に似ているような気がする」と成島監督は笑顔で付け加える。

写真は「希望の映画にしたかった」と話す成島出監督=大阪市北区のアプローズタワー

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